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経営戦略

法的責任も! 企業に求められる災害対策

震災をはじめ、風水害などに見舞われた際、企業には2つの災害対策が求められます。一つは従業員や顧客の安全確保であり、もう一つは重要業務の継続です。そのために平常時においてすべきことは何か、企業が取り組むべき災害対策についてまとめます。

  1. 防災意識を高めよう! 企業の災害対策が重要な理由
  2. 企業が災害対策を進めるときのポイント
  3. 企業が災害対策を考える上で欠かせないBCPとBCMとは
  4. 企業が取り組むべき災害対策

防災意識を高めよう! 企業の災害対策が重要な理由

企業には災害時に従業員や顧客の安全を考えて対応しなければならないという責任があります。これは道義的な観点からのみ「責任がある」と言われているわけではありません。

まず、労働契約法(平成20年3月施行)の第5条には、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と記されています。このため、業務上で災害防止の措置をとらなかったことによって従業員が被害を受けた場合には、企業は安全配慮義務違反と判断され、従業員に対する損害賠償責任が生じます。

では自然災害時はどうかと言えば、これについても状況によって法的責任はあると考えるのが妥当です。2011年3月11日に発生した東日本大震災では、津波によってある自動車学校の教習生24人と職員1人が犠牲になり、遺族らが安全配慮義務違反や過失があったとして自動車学校の会社と役員らに対し損害賠償を求めました。これに対し、仙台地方裁判所の第一審判決では同自動車学校に対する法的責任が認められました。

また、国の防災基本計画にも「企業防災」の促進についての記述があります。そこでは、災害時の企業の果たす役割として、生命の安全確保、二次災害の防止、事業の継続、地域貢献・地域との共生を挙げています。また、災害時に重要業務を継続するために事業継続計画(BCP)を策定するよう努めるとあります。災害時に復旧が遅れると、企業の存続が難しくなるケースもありますので、日ごろから充分に対策することが重要だと言えるでしょう。

企業が災害対策を進めるときのポイント

企業は災害に対し、まず社内の人的・物的被害を最小に抑える取り組みをしなければなりません。そしてもう一方、災害時にもできるだけ事業を継続させられるよう、製品やサービスの提供などを止めないための備えが求められます。

この2つを実践するには、社内に防災意識を根付かせることと、過去の災害事例やハザードマップなどを確認し被害状況を具体的に想定し対策を検討すること、さらに事業継続のための対策を講じることが求められます。

企業が災害対策を考える上で欠かせないBCPとBCMとは

災害時、企業が事業を継続するにはBCPとBCMについて理解し、全体的な方針や具体的な方法、そして計画を策定する必要があります。

BCPとは

「BCP(Business Continuity Plan)」とは、企業が災害時に重要業務を継続するために必要な方針、手続き、手順などを決めておく計画のことです。事業継続計画と訳されます。

BCMとは

「BCM(Business Continuity Management)」とは、災害や事故が起きた際、企業が重要な業務を中断させない、あるいはやむを得ず中断した場合でも最小時間内に業務を復旧させるための管理プロセスのことです。事業継続管理と訳されます。BCPはBCMの一部だと言えます。

企業が取り組むべき災害対策

企業が災害対策として取り組むべき課題を整理すると、次の3点に集約されます。

1.データを守るための対策

企業が事業を継続するために必要なデータの保護を行います。具体的にはバックアップデータの遠隔地保管やシステムのクラウドへの移行が候補となるでしょう。その際、堅牢なデータセンターにデータを格納することも重要ですが、同時にデータの復旧がどれだけスピーディーかつスムーズに行えるかという点にも配慮する必要があります。復旧を容易にするためには、復旧ポイントが常に最新状態に保たれているかどうかも問題となります。また、停電時にはUPS(無停電電源装置)などによる電力供給の手段が用意されていることも不可欠です。

2.設備を守るための対策

設備などに対する物的資源への被害を最小に抑えるための対策をします。オフィスや工場内の設備が地震や風水害に耐えられるかどうかをチェックし、金具による固定、落下防止バーやベルト、ネット、室内免震装置などの設置を行います。さらに、部品調達先などサプライチェーン上の企業の設備等が被災した場合も想定して、部品調達先を複数にするなどのリスクの分散化も検討します。

3.従業員を守るための対策

防災訓練を実施し、従業員向けの災害時の行動マニュアルを作成して配布し、災害時の安否確認方法についても全社で情報を共有し整備しておきます。また、帰宅困難となった場合の対策として、水、食料、毛布やその他の防災用品の備蓄をしておく必要があります。

企業にとって災害対策は従業員や顧客を守り、事業を継続させるために必要不可欠です。さらに言えば、常日頃、従業員や顧客から「防災対策が十分でない」との印象を持たれることは企業にとって大きなイメージダウンとなります。現在の災害対策は本当に有効性のある万全なものになっているか、今一度見直してみてはいかがでしょうか。

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