基幹システム
失敗しないための基幹システム導入の進め方
基幹システムの導入は企業に多大なメリットをもたらします。しかし、基幹システムの導入そのものに失敗し、システムの機能がまったく有効活用されないという事態に陥ることもあり得ます。一体、何が導入の成否を分けるのでしょうか。失敗しないための基幹システム導入の進め方について解説します。
基幹システム導入に失敗する要因
基幹システムの導入では、「導入計画を策定したのに導入に至らなかった」、あるいは「導入はしたものの十分に活用されているとはいえず導入効果がみられない」という事例が少なからず見受けられます。
なぜ導入に失敗するのかは、ケース・バイ・ケースなので簡単に結論を出すのは難しく、いくつか要因を挙げるとそのどれもが少しずつ当てはまるような気がしてくるのではないでしょうか。たとえば、目的や目標設定が曖昧だった、部門間での意見が対立して調整が十分に行われなかった、導入後の運用方法に具体性が欠けていた、既存システムとの連携方法を精査していなかった……などです。
また、現場の意見を十分にヒアリングしたうえで要件を定義していなかったことが原因として指摘されることもあります。もちろん、現場の声に耳を傾けるのは非常に重要なことなのですが、現場の意見のみを聞いて導入計画を作成してしまうと、それが失敗につながることもあるので注意が必要です。
むしろ経営戦略や事業戦略、全社で取り組むべき目的・目標の再確認や再定義を優先したほうが、基幹システムの導入は成功しやすい場合もあります。
基幹システムの導入は部門をまたいで全社的に取り組むものなので、ある部門にとってはプラスに働くシステムが、別のある部門ではマイナスに働くといったことはどうしても起こってしまいます。全部門の要求を反映しようとするあまり目標を見失っては、失敗してしまう可能性は高いでしょう。そこで、ベースとなる導入目的とコンセプトを明確に確立し、そこからブレることなく導入を進めていくのです。
そのうえで現場の意見も随時取り入れるというトップダウン方式のプロセスを経ることで、導入計画通りの結果が得られやすく、スムーズな基幹システムの導入が可能になるはずです。
基幹システム導入のポイント
以上を踏まえて、基幹システム導入の際にはまず、企業の経営課題、経営戦略、事業戦略など会社の将来のビジョンを確認することから始めます。
次に取り組むのは、導入目的の明文化です。言い換えれば、導入目的を明文化するために会社としてのビジョンを再確認するということでもあります。予算を含む長・中・短期経営計画なども参照します。導入目的は、たとえば次のようなものが考えられます。
・基幹システム導入に合わせて全面的に業務プロセスを改善する。
・部門ごと、業務ごとに導入してきた情報システムなどを統合する。
・古いシステムを新しい基幹システムでリプレースする。
・新事業部門や海外拠点の設立に合わせて基幹システムを構築する。
・内部統制を実現する。
導入目的によっては、既存の業務プロセスを見直す必要が出てくる場合もあります。基幹システムの適用範囲や規模も目的によって変わってきます。
基幹システム導入プロジェクトの進め方
基幹システムの導入プロジェクトは大まかに、以下のような流れで進めていきます。
- 自社の将来ビジョン、経営・事業戦略、経営計画の確認
- 導入目的の明確化
- 現状の調査・分析
- 適用範囲・規模の決定
- 製品、ベンダーの選定
- 導入計画の作成
- 要件定義
- 選定した基幹システムに合わせた業務改革
- 実装
- テスト
- リリース・運用
(1)〜(6)は企画段階です。基幹システムの導入が成功するか否かは、この企画段階の優劣が大きなウェイトを占めるといえます。上述したように、会社のビジョンから導入目的を定め、自社の状況にマッチする製品を選んで精緻な導入計画を作成していかなければなりません。
(7)の要件定義は、発注側とベンダー側、もしくはコンサルタント会社などと協同して内容を詰めていきます。
その内容は多岐にわたりますが、たとえば導入しようとしている基幹システムと実際の業務プロセスとの間において、必要とする機能がマッチしているかどうかを分析する作業(フィット&ギャップ分析)を行っています。その際、選定した基幹システムとマッチしない部分が生じる場合には、基幹システムの一部仕様をカスタマイズする場合もありますが、(8)に記述したとおり、業務改革を行って業務プロセス側を変更するという決定をすることもあります。
このギャップのある業務に関する対応策の決定もまた、導入目的に合致したものでなくてはなりません。現場の作業との擦り合せで導入プロジェクトのコンセプトがブレてしまうと目的もまたズレてしまい、失敗を招く要因となってしまいます。とはいえ、現場の従業員が使いづらいシステムができ上がってしまっても、それもまた成功とは言えません。企画段階でもそうですが、この要件定義段階でも、各担当部門との間で綿密な打ち合わせが必要となります。
基幹システムの導入に失敗しないためには、基幹システムによって何を実現するのかという目的をしっかりと定め、その目的という土台の上に企画を立て、企画に沿って導入プロジェクトを遂行していかなくてはなりません。そのためには高次の視点を持つ経営トップと、現場での感覚を知る導入部門の従業員の両者がともにプロジェクトに参画する必要があります。一致協力の下、基幹システムの導入を成功させてください。
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