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IoT

製造業に大きな変化をもたらすIIoT(インダストリアルIoT)とは

IoTが世間で注目される一方で、産業界において非常に重要な意味を持つ概念として捉えられているのが「IIoT」です。IIoTの概要や、IIoTが製造業に対してもたらす大きな変化などについて解説します。

  1. IIoT(インダストリアルIoT)とは
  2. IIoTが製造業にもたらす変化
  3. IIoTの課題

IIoT(インダストリアルIoT)とは

IIoTは「Industrial IoT(インダストリアルIoT)」と呼ばれることもあるとおり、「IoT」を前提とした用語です。IoT(Internet of Things)は日本語で「モノのインターネット」と訳され、電化製品、医療器具、自動車、建物など多種多様なモノがインターネットに通じて相互につながることで可能となるサービスやビジネス、もしくはそれを実現するための技術を指します。

そして、IIoTとは産業用のIoTのことです。IIoTでは産業機械や装置、設備、システム、人の動きなどのモノやコトがネットワークで相互接続されます。これにより現場作業の効率化、見える化、生産管理や在庫管理の自動化などが可能になります。
例えば、センサーを備えた生産機器や設備が得た情報を一つのプラットフォームで一元管理できれば、それだけで製造工程を効率的かつ厳格にコントロールできるようになります。あるいは生産設備が故障の前兆を察知しアラートを発することで、事故の未然防止(予兆保全)も可能になるでしょう。

IIoTが製造業にもたらす変化

IIoTを活用すれば、製造工程管理、工場設備の安全管理、製品の品質管理、生産管理、在庫管理、流通管理などの管理業務の効率化が期待できます。それによって得られるメリットは、突き詰めれば製造コストの削減と、製品の品質・価値の向上が両立できるという点にあります。

ただし、IIoTは単に生産現場におけるオペレーション効率の改善のみに役立つ技術ではありません。IIoTは製品にこれまでとはまったく異なる付加価値を与え、商品開発のあり方を根本的に変化させ、製造業のみならず流通業や小売業を巻き込んだイノベーションを促進する可能性があります。

例えばモノを売るためには、これまでは製品の機能や性能を常に進化させ、短いサイクルで開発して販売することで流行を形成し、消費者の需要を作り出していくといった手法が有効とされてきました。しかし、このようなビジネスモデルは製品の機能・性能が成熟していけばやがて頭打ちになります。また消費者の要求も多様化し、よりパーソナルにカスタマイズされた機能や性能が求められるようになってきています。

となれば、製造する製品にはごくベーシックな機能のみが備わっていて、消費者の要求や使い方に応じて必要な機能を付け加えていくという形が当たり前になっていくかもしれません。そうなれば消費者はサービスに対して課金するように、製品に付け加えられた機能に対して対価を支払うようになると考えられます。

あるいはIoTとIIoTが組み合わさることで、消費者の使い方を製品自身がデータ収集し、製品自身が消費者に対して必要な機能を提案することができるようになる可能性もあります。

IIoTとIoTの連携は、製造業をサービスベースの業種へと変化させるともいわれています。モノそのものを売るというよりは、モノに付帯するサービスを売ることで収益を上げていく、そうしたビジネスモデルが今以上に一般化していくと考えられます。

IIoTの課題

IIoTが普及していくにはまだまだ多くの課題も残されています。

インターネットなどのネットワークを経由して情報が行き来するとなれば、まず万全なセキュリティ対策の構築が欠かせません。IIoTの通信がハッキングされれば工場が正常に稼働しなくなる可能性があります。IoTによって収集されたプライベートな情報が傍受され、悪用される危険性もたやすく予測できます。

さまざまな機器やシステム同士を接続するための規格の統一も必要です。海外ではIIoTに使用するためのオープンで共有可能な通信規格やプログラム言語を策定し、サプライチェーンを含めて互いに簡単に「つながる」ことのできる環境づくりが進んでいます。

中でもドイツは「インダストリー4.0」というコンセプトを掲げ、製造業におけるオートメーション化・データ化・コンピューター化によって第四次産業革命を推進するというプロジェクトに取り組んでいます。日本では2017年3月に経済産業省が「コネクテッドインダストリーズ(Connected Industries)」支援政策を発表し、「さまざまなつながりにより新たな付加価値が創出される産業社会」をめざす試みが始まったところです。

接続のためのバックボーンとなる通信ネットワークについても、これまで以上の高品質化が推進されなくてはなりません。ネットワークには、高速で遅延がなく、接続が切れない品質が求められます。次世代の通信規格5Gがこの点において、期待されています。他にもセンサー、データベースに関する技術、データの取得・処理・移動を行うための技術、データを解析するためのビッグデータやAI関連技術の進化も要します。
そして、これらの技術を扱うエンジニアが不足していることが、現時点での最も大きな課題といえるでしょう。

IIoTが産業にもたらす変化は非常に大きなものになる可能性があります。IIoTとその関連技術はいずれ巨大な経済的利益を生み出すようになり、我々の生活や社会そのものを根本的に変えることが予測されています。IIoTに対する注目度は今後ますます高まっていくでしょう。

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