IoT
IoTと5Gを組み合わせるメリットとは?

IoTと5G、この2つはしばしば同時に語られることの多い技術です。両者を組み合わせるとどのようなメリットが生まれるのでしょうか。IoTと5Gの関係性や、今後、両者の組み合わせによって進化が期待される分野について解説していきます。
5GでIoTが進化する?
5Gは、高速・大容量、低遅延、同時多数接続を特徴とする「第5世代移動通信システム」です。国内では2019年に試験サービスが始まり、2020年3月25日にNTTドコモ、26日にKDDI、27日にソフトバンクと順次サービスがスタートしています。
一方、IoTは「モノのインターネット」と呼ばれる技術です。以前はインターネットにつながっていなかったさまざまなモノ、たとえばスマート家電、医療機器、工場の生産ラインの機械設備、自動車などがネットワークに接続され、データの収集・分析、対象物の監視・状態検知、IoT機器の制御などが行えるようになっています。
さて、5Gは単にスマートフォンなどの通信が速くなるといった類いの次世代通信ではなく、IoTをいま以上に進化させ、普及を促進するための社会インフラになるといわれています。
IoTのデバイスが増えれば増えるほど、それらすべてを有線でネットワークに接続することはナンセンスになります。また無線通信を使うにしても、現在まだ主流である4GではIoTが扱う大量のトラフィックデータに対応しきれません。Wi-Fiを利用するのも解決策の一つですが、使用できる場所が限定的となります。
しかし、5Gの基地局が全国に作られ、なおかつ、その性能が十分に発揮されれば、IoTにとって申し分のない環境が用意されることになります。5Gの性能と仕様は4Gをはるかに凌ぎ、Wi-Fiと比べるなら次世代規格である「Wi-Fi6」と比肩するものになります。逆にいえば、5GというインフラなくしてはIoTもその真価を発揮できないということになるでしょう。
IoTと5Gを組み合わせるメリット
IoTと5Gを組み合わせるとどのようなメリットがあるのか、5Gの3つの特長とともに説明します。
高速・大容量
IoTの適用分野が広がるほど、送信されるデータは膨大な量になっていきます。ビッグデータを形成するストリーミングデータもそこに含まれます。これら膨大なデータを滞りなく高速に送信するために、5Gの高速かつ大容量という特長が活かされます。
低遅延
5Gの「1ミリ秒以下」といわれる低遅延も、IoTにとって重要な意味を持ちます。
わかりやすいのは自動運転です。走行中にセンサーが取得した情報を管理センターに送信してその情報にもとづいて遠隔制御する場合、わずかなタイムラグが生じるだけで制御が遅れ、大きな事故につながりかねません。このようなリアルタイム性の高い(遅延許容度の低い)分野でIoTを活用する場合には、低遅延であることが必須条件となります。
同時多数接続
同時多数接続とは、一つの基地局に多くのデバイスを同時に接続できることを指します。5Gはスマートフォンや携帯電話だけではなく、IoT時代にも十分対応できるよう、4Gの10倍といわれる同時接続が可能な仕組みを備えています。
IoTと5Gの活用が期待される分野
IoTには5Gというインフラが欠かせないと述べましたが、5GだけがIoTで利用される通信というわけではありません。Wi-Fiもまた、限られた空間内であればIoTのデータを送信するために使われます。スマートタグと呼ばれるようなIoT製品ではBluetoothのようなごく短い距離で通信する技術も利用されています。
また、それほどリアルタイム性を要求されない長距離通信が必要な分野では、LPWA(Low Power Wide Area)という通信方式も大いに利用されると考えられています。LPWAはなるべく消費電力を抑えて遠距離通信を実現する通信方式で、遠隔地から数年〜数十年にわたって通信を続けるようなIoT機器に向いています。たとえばスマートメーターのような電力量計、監視・防犯カメラなどがそれに該当します。スマートハウスやスマートシティもLPWAの利用分野となるかもしれません。
一方、5Gは上でも触れた自動運転などのリアルタイム性が求められる分野で利用される可能性が高いといえます。ほかにドローンやサービス用ロボットなども同様です。
医療分野では、遠隔診療などはそれほど厳密なリアルタイム性は必要ないものの、遠隔治療、遠隔手術などが実現されるには5Gのような低遅延通信が不可欠となるでしょう。
工場の生産ラインでも同じようにリアルタイム性は重要です。生産ラインで何か不具合が起きたときなどは、即座に対応する必要があるためです。また生産ラインの見える化によるミス防止や作業効率化、生産量調整などには、5Gの高速・大容量、同時多数接続という特長が役立ちます。
なお、工場に関しては、日本では企業が局所的な5Gシステムを構築し、プライベートネットワークなどとして導入・利用できる「ローカル5G」も注目されています。ローカル5Gには5Gの基地局が手薄になる地方などでも5Gが使用でき、セキュリティを自社の基準に照らして強化できるなどのメリットがあります。
5Gと組み合わせることで、IoTの可能性は今後ますますさらに広がっていくでしょう。これまでとはまったく異なるサービスやビジネスが生まれる可能性もあります。両者の動向に注目してください。
※「NTTドコモ」は、日本電信電話株式会社の商標または登録商標です。
※「KDDI」は、KDDI株式会社の商標または登録商標です。
※「ソフトバンク」は、ソフトバンクグループ株式会社の商標または登録商標です。
※「Wi-Fi」はWi-Fi Allianceの商標または登録商標です。