製造業でIoTを活用する際に大切なセキュリティ対策

製造業でIoTを活用する際に大切なセキュリティ対策

IoTを工場に導入して成功している事例が増えています。しかし、その際に注意しなければならないのがIoTを活用したシステムに対するセキュリティ対策です。どのような対策が必要なのかを見ていきましょう。

IoTとは? 製造業におけるメリットを解説

IoTとは、モノをインターネットに接続し、情報交換することで、遠隔からの認識、計測、制御などを可能にする仕組みのことです。Internet of Thingsの頭文字を取った用語なので、「モノのインターネット」とよく訳されます。

現在、コンシューマー向けに普及し始めているIoT製品にはスマートスピーカーなどの各種電子機器、照明器具やエアコンなどの家電製品、留守中のペットをモニタリングできるネットワークカメラなどがあります。

また、IoTは製品の生産現場である工場にも導入されています。工場内のセンサーを備えた生産設備をネットワークに接続して稼働状況を見える化し、遠隔地からでもモニタリングできるようにするのが第一ステップ。生産設備や機械から得られたデータを分析して生産管理システムなどと連携させ、最適化された生産体制を維持すべく制御するのが第二ステップです。

さらにその先には、AIやロボット、ビッグデータなどを活用して、「スマートファクトリー」などと呼ばれるような少量多品種、高付加価値の製品を大規模生産するステップも控えています。

では、工場のIoT化は、製造業者に対しどのようなメリットをもたらすのでしょうか。IoT技術を活用して得られる主な利点は、次の3点です。

1.品質の向上

IoT化された工場では、生産設備から送られるデータを解析することで、生産ラインが最適な状態で稼働しているかどうかを常時監視できます。設備の不具合や故障の発生もリアルタイムに把握し、予防保全システムなどで分析することによって、今後発生する不具合や故障を未然に防ぐことが可能です。また最終段階だけでなく途中の各工程で確実に不良品を取り除く仕組みや、作業者がIoTデバイスを使っていつでも作業手順を参照、確認できることなども品質向上、品質管理に役立ちます。

さらに、製造したIoT製品から消費者の使用状況に関するデータが送られてくるようになれば、多様なニーズに対応した製品を設計、開発できるようになります。

2.コスト削減

IoT化によって生産効率が上がり、不良率が下がれば、既存の生産現場にあった無駄を省いてコストを削減できます。例えばある作業場所で測定されたデータを分析して調整方法を考案、作業段取りの最適化を図るといったことも、複雑な手順を踏まずに実現できます。また生産だけでなく、ヒューマンエラーを排することで誤受注や誤出荷も防止できるようになります。

3.納期短縮

さまざまな局面で時間短縮ができるのもメリットです。まず作業指示情報や計画情報、作業着手、中断、完了情報などの双方向の伝達がスムーズなので、コミュニケーションに要する時間と手間が大幅に削減できます。正確な作業時間データが蓄積されていけば、標準時間の適正化も実現できます。また、IoT導入によって、工場内で原材料や完成品を運搬する際にフォークリフトなどを使う時間(マテハン時間)も削減可能になります。

製造業のIoTにおけるリスク

製造業で扱うデータの中にはプライバシーに関する情報や個人情報も含まれています。ネットワークでデータをやりとりする際に、それらの情報が漏えいするリスクがないとは言い切れません。また、マルウェアへの感染や、不正アクセス、ハッキング、サイバー攻撃などの危険性も考えられます。データの書き換えや窃取のほか、誤作動が引き起こされるようなケースも想定するべきです。万一、生産現場のシステムがダウンするようなことがあれば、その被害は甚大なものになります。

また、上記が現実のものとなった場合には顧客や第三者に被害を与え、賠償責任問題に発展するケースも起こり得るでしょう。

IoTにおけるセキュリティ対策

そこで急務とされているのが、IoT環境におけるセキュリティの確立です。工場のIoT化に際しては、少なくとも次のような対策や取り組みが必要です。

1.IoTデバイスもリスクのあるデバイスだと経営層に注意喚起する

まず経営層がIoT化に伴うリスクとセキュリティに関して十分に理解することが急務です。本社、工場を含めた全社一貫したセキュリティ方針が整わなければ、有効な対策は立てられません。現場からの上層部への報告などを通じて、具体的なリスクについて注意喚起することが求められます。

2.セキュリティ対策チームの設立

自社が導入しようとしているIoTにはどんなリスクがあるのかを把握し、それを防ぐためにどのような対策が必要なのかを判断するのは、セキュリティ対策チームの役割です。ITのセキュリティ情報に詳しい人材を確保し、チームを設立するべきでしょう。セキュリティ対策チームは有効な対策を講じた後、IoTの監視と管理も実施します。

3.セキュリティ会社のサービスの利用

自社内の対策チームだけではなく、セキュリティ会社のサービスも活用したいところです。特にサイバー攻撃だけではなく、災害時なども含めてシステム全体が稼働停止し、事業継続ができなくなるリスクを防ぐには、セキュリティ会社によるサポートが必要となることが多いでしょう。

4.認証システムの導入

IoTを活用したシステムを使用する際は認証システムが必須です。これは当然ですが、IoT化した工場では製造装置と遠隔地にある監視センターや、工場と工場がネットワークで結ばれるケースもあります。そうしたシーンでも安全性を確保できる、強固な認証システムを導入する必要があります。

5.従業員へセキュリティ対策の大切さを啓発

最後に求められるのは従業員全員のセキュリティに対する高いリテラシーです。セキュリティ対策チームはその大切さを十分に啓発し、定期的に実例を用いながら研修やセミナーを実施すべきでしょう。

製造業におけるIoTの重要性は今後さらに増大していくことは間違いありません。しかし、一方で主にセキュリティに関連するリスクが存在することも確かです。強固で多層的なリスク管理体制を敷き、IoTのメリットを最大限に活用できる環境を整えてください。