IoT
医療のIoT「IoMT」の展望と活用事例

あらゆるモノをインターネットに接続し、ネットワークを介して情報を共有する「IoT」。医療分野では「IoMT(Internet of Medical Things)」と呼ばれ、データの蓄積と分析によって、医療の精度やサービスが向上すると期待されています。ここでは、IoMTの可能性や展望、実際の活用事例について紹介します。
医療IoT(IoMT)の可能性
医療現場でのIoTはIoMTという名称で知られていますが、内容そのものはIoTと同じであり、医療現場で使われる機器や設備にIoTを導入することで、患者のリアルタイムなデータを取ったり、機器・設備の動作状況を監視したりします。これにより医療従事者にかかる負担を減らし、機器や設備の保守を容易にするとしてIoT(IoMT)が世界的に注目されています。
近年ではAI(Artificial Intelligence:人工知能)とIoTを組み合わせた新たなテクノロジーにも注目が集まっています。取得したデータを蓄積してAIで分析すれば、今までにない新しい発見や知見が得られる可能性があります。医療におけるサービス革命が起きる可能性も秘めており、未来の医療はさらに便利で可視的なものへと変化していくでしょう。
医療現場が抱える課題
医療現場では医師・看護士・事務・その他の医療スタッフが慢性的に不足しており、深刻な状況に陥っています。離島・過疎地などでは医師不足のために、一番近い病院まで数時間かかるという場所もあり、緊急事態の対応が難しい状態にあります。
高齢者が増えるほど医療従事者の需要は増加しますが、医療現場から離れる人や若い世代の人口減少が深刻な問題となっており、人手不足の解消に人的な労働力を求めるには限界があります。そのため、IoTをはじめとするテクノロジーの導入が急がれています。
人手不足と並ぶ医療現場の問題点として「処方ミス」や「医療ミス」もあります。病院やクリニックでは医師の指示に従って処置や投薬を行いますが、医師が判断ミスをすることもありますし、看護師などの医療従事者が指示とは異なる処置を行ってしまうミスもあり、それによって患者が重大な副作用を受けるなどの実例も確認されています。
診断や治療方針の決定には膨大な知識と経験が必要ですが、それでも十分ではなく科学的なエビデンスが求められる症例も数多くあります。そのため、IoTの導入によって患者の病状や治療の経過を可視化し、ミスを防いで正しい判断をサポートする技術が期待されています。
医療IoT(IoMT)の展望
IoT(IoMT)は、少子・高齢化にともなう医療現場の人手不足問題を解消するために役立ちます。たとえば、過疎地や被災地ではIoTの導入によって「遠隔診療」が可能になります。大病院や専門医と通信すれば的確で適切な判断を仰げるので、離れた場所でも安心して診察が受けられるようになるでしょう。
また、IoT機器を使ったモニタリングによって現場の医師と専門医をつなぎ、医師同士が話し合って治療法や解決策を見出すことができますし、処方ミスや医療ミスといった問題の解決も期待できます。
モニタリング技術を使えば、難病や難症例の治療も複数の医師の間で情報共有できるようになるため、誤診や病院間のたらい回しを減らせる可能性があります。IoTによって蓄積されたデータをAIが分析したり、ネットワーク上にある科学的データや実証実験によるデータを参考にしたりすれば、さらに正確な治療や処方ができるようになるでしょう。
医療IoT(IoMT)の活用事例
近年ではエンジニアと医療従事者が協働して「自動問診システム」が開発され、AIによる質問に患者が答えると、自動で解析して記録できるようになりました。医師が問診する時間を削減することでより多くの患者を診察することができ、患者の待ち時間も短くできる画期的なシステムです。
病院内にいる入院患者の位置情報を管理し、立入禁止エリアに入るとアラートで知らせるシステムや、遠隔操作による手術が可能な「遠隔治療ロボット」も登場し、実用化や一般化に向けての取り組みが始まっています。
手首に巻きつけるウェアラブルデバイスを使って患者の心拍数や血圧などを測定するモニタリングは、計測の手間を省くものとして今後さらに導入が広がっていくと考えられています。すでに5GとIoT技術を取り入れた「スマート治療室」も登場し、遠隔手術を成功に導いています。これらのシステムはいずれも医師と患者が対面する手間を省き、医療にかかる負担を減らすものとして利用されています。
医療には専門性をもつ医療従事者のヒューマンパワーと、医学的な見地や知識が必要不可欠です。しかしその2つを兼ね備えている人手を十分に確保することは容易ではなく、IoTやAIといった最新技術の導入が期待されています。
これからIoTはIoMTとして医療の現場でも一層活用が進められていくと予想されています。もはや未来の話しではなく、すでに活用されている技術もあり、多くの人の命を救う可能性をもっています。ぜひ積極的に導入していきましょう。