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予防保全とは? IoT活用で実現できること

工場の生産ラインで使用する機械設備の故障を事前に予測し、計画的に点検や部品交換などを行うのが「予防保全」と呼ばれる保全方法です。そしてIoT時代を迎えたいま、予防保全のさらに先を行く「予知保全」という保全方法も注目されています。
予防保全、予知保全とはどのようなものなのか、これらの概要を解説します。

  1. 予防保全とは
  2. 予防保全の必要性
  3. IoTで実現する予防保全の一歩先「予知保全」

予防保全とは

予防保全とは、あらかじめ定めた基準や手順に従って計画的かつ定期的な作業を行うことによって、生産ラインにおける機械設備の故障、不具合発生、性能低下などを未然に防ぐ保全方法です。対象となるのは工場内の生産ラインで使用される機械、装置、計器類、それらの部品などです。

予防保全の目的には、機械設備が壊れないようにすることはもちろん、機械などの寿命を伸ばすこと、停止時間を減少させること、突発的な故障による損失を防ぐことなどが含まれます。そのための作業として機械設備を構成する部品の修理や交換を行います。

また、予防保全の方法としては、あらかじめ定めておいた一定期間が過ぎる時点で周期的に部品などを交換する「時間基準保全(TBM:Time Based Maintenance)」と、劣化傾向を監視・管理して故障に至る前の適切な時期に修理交換する「状態基準保全(CBM:Condition Based Maintenance)」が知られています。

時間基準保全は、部品や機器類の耐用年数を目安として定期的な交換を続けることで故障などの発生を未然に防ぎます。一方の状態基準保全は、部品などの状態をモニタリングし、劣化の度合いを観察し、故障の兆候を発見して必要と判断したときに部品の交換などを行います。

さらに、予防保全と対をなす保全方法として挙げられるのが「事後保全」です。事後保全は機械設備に故障や不具合が発生した場合にその部分を調べ、原因を特定して修理することです。

予防保全の必要性

事後保全は、予防保全という考え方が広まるまではごく一般的な保全方法でした。事後保全においては、故障後いかに迅速かつ柔軟に修理などの対応ができるかが、故障による損失を最小限にするためのポイントでした。しかし、あくまで対処療法的な措置でしかない事後保全には限界があります。修理部品の入手に時間を要したり、関連設備にまで故障被害が及んだりするのはめずらしいことではありません。突然、機械設備が故障して、しかもその故障が致命的なものであった場合には、生産ラインが長時間停止し、生産計画に大きな影響が出てしまいます。

そうした事後保全の弱点を改善したのが予防保全です。予防保全には次のようなメリットがあります。

  • 突発的な故障、不具合が減る
  • 突発的な故障、不具合に伴う損失(生産減、品質低下、納期遅延など)を減らせる
  • 修理不能な状態に陥るような致命的な故障を防げる
  • 重大事故を防止できる
  • 機械設備の長寿命化が図れる
  • 生産の安定化に役立つ

コスト面でいえば、予防保全のためのシステムを作って運用するよりも、故障してから迅速に修理して対応する方が経済的なケースもあります。しかし、総体的に見れば予防保全は事後保全よりも優れた保全方法だといえます。

IoTで実現する予防保全の一歩先「予知保全」

IoTが広く普及しつつある現在では、予防保全をさらに一歩先に推し進めた、「予知保全」という保全方法も注目されています。

予知保全とは、機械設備の状態を常に監視・把握することで、故障などを未然に防ぐ保全方法です。予防保全のところで出てきた状態基準保全(CBM)も予知保全と非常に近い考え方です。

予知保全を実現するには、機械設備を連続的に計測するためのシステムが必要です。ここにIoT技術を組み込めば、生産用の機械設備にセンサーを取り付け、状態を監視してデータを計測することができます。それだけではなく、計測データをIoTによって収集、可視化、ビッグデータ化し、人間による判断や、AIによる解析によって、異常検知、故障の兆候発見を実現することも可能です。

また、このような予知保全システムの対象は、工場内の機械、装置、計器類、部品などだけにとどまりません。生産ラインの各プロセスや工場そのものなど、そのレベルを拡大していくことも考えられます。予知保全システムの最終的な目標は、機械設備の故障や不具合をすべて事前に予測することでゼロにし、止まらない工場を作ることといえます。

現在、IoTを活用した予知保全システムは、部分的にではあるものの、すでにいくつかの企業で実際に導入されています。製品の製造過程で使用する機械設備にセンシング装置を組み込み、機械の負荷や消耗の度合いを可視化、部品の交換タイミングの最適化を進めているといった事例が見られます。

今後、予知保全による自動化システムは事後保全や予防保全に取って代わるか、あるいはそれらとの最適な組み合わせを模索しながら、多くの工場に導入され、一般化していくものと予測されています。予知保全システムによって守られた止まらないスマート工場が現実に登場するのも、そう遠い未来のことではないかもしれません。

生産ラインで発生するトラブルを未然に防ぐための予防保全、そして予知保全は、工場の生産性や安全性を高めるために今後ますます重要な役割を担っていくものと考えられます。工場のスマート化の一画とも言える予防保全、予知保全の導入について、検討してみてはいかがでしょうか。

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