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IoT

トレーサビリティとは? 重視される業界と技術について解説

物流や製造などの業種では、製品の品質向上や安全性の確保のために「トレーサビリティ」と呼ばれる技術が導入されはじめています。ここでは、トレーサビリティの概要と重視される業種、トレーサビリティを実現するための仕組みなどについて紹介します。

  1. トレーサビリティとは
  2. トレーサビリティが重視される業種
  3. トレーサビリティの仕組みと技術
  4. チェーントレーサビリティと内部トレーサビリティ

トレーサビリティとは

トレーサビリティとは英語の「Trace(追跡)」と「Ability(能力)」の2つを組み合わせた言葉で、日本語に訳すと「追跡可能性」になります。製造や加工の工程、あるいは荷物の受発注などについて追跡記録を取ることおよび追跡可能な状態にすることを指します。

トレーサビリティを導入すると、問題が起きそうな製品をピックアップして事前に排除したり、データの分析によって効率的に生産や品質管理ができるようになります。日本国内では自動車や電子部品、ソフトウェア、システム開発、食品、医薬品、運送など、さまざまな業界がトレーサビリティ技術を導入し、製品の調達や輸入品の生産段階から最終消費段階までを記録して、問題の早期発見による未然防止、解決に役立てています。

製造業におけるトレーサビリティの例を挙げると、原材料や部品の調達・加工・組立・流通・販売までの工程について、製造者・仕入先・販売元を記録して履歴を残します。担当者がすばやく履歴をチェックできるので、問題が起きた場合にその発生源を突き止めることが容易になります。

トレーサビリティの実現には「情報の蓄積」が重要であり、あらゆる情報が収集できるようにインフラや環境を整備するところから始まります。企業と企業の間、部門ごとのシステムもすべて連動させる必要があり、バーコードやIoT技術を活用して効率的にデータが集められるような仕組みづくりを行う必要があります。

トレーサビリティが重視される業種

トレーサビリティが重視されるのは、履歴を追跡することで製品の品質管理が向上する業種です。食品加工などの業種では、原材料の入荷先・製造日時・製造内容・検査の日時・責任者および担当者・生産ラインについての情報・出荷先や卸先などのほか、生産者・産地・出荷日時・加工日時・食品の賞味期限と消費期限の情報も重要です。ただし、業界や品目、製造工程に応じてトレーサビリティを実施する範囲が変わるため、追跡する項目は一定ではありません。

食品以外にトレーサビリティが推奨される業種としては製造業が挙げられます。原材料や部品の調達・加工・組立・流通・販売までの各工程についての記録を取り、不良品が発生したり破損が起きたりするリスクを低減し、品質管理の向上に役立てます。

ECの分野では、現段階では少なくとも生産から消費者の手元に届くまでを追跡できるようになりました。購入済みの品物の発送から顧客の受け取りまで、宅配業者の追跡サービスを利用することでほぼリアルタイムに追いかけられるようになっています。

近年では農林水産省も産地偽装問題の解決に乗り出し、食品(牛肉や鶏卵など)を中心にトレーサビリティ普及に向けた活動を行っています。官民合同でICタグを研究・開発し、トレーサビリティに活用しようという試みを実施しており、徐々に普及が進んでいます。

トレーサビリティの仕組みと技術

トレーサビリティは仕入れから納品までの移動ルートを把握できるように各工程のデータを記録します。後から問題が発生したときにデータを遡及・追跡して、原因究明や製品の回収に使います。

IoTなどの最新のテクノロジーを使えば、ICチップや磁気センサーによって部品・製品を個別もしくはロットごとに識別できます。さらに受け取ったデータをネットワーク経由でクラウドに保存してAIで分析や検証を行ったり、データを追跡したりできます。蓄積したデータを使って部品や製品の移動ルートを追うことを「トレースフォワード」、逆に時系列をさかのぼってたどることを「トレースバック」といいます。

チェーントレーサビリティと内部トレーサビリティ

トレーサビリティには大きく分けて2つの方法があり、複数の企業やメーカーにまたがって製品の移動ルートを追いかける「チェーントレーサビリティ」、もうひとつは単一の企業やメーカーの中で移動ルートを追いかける「内部トレーサビリティ」です。

チェーントレーサビリティは主に流通業において行われている手法です。原材料の調達から部品の生産・加工・卸売・小売まで、商品がどの段階にありどこへ移動したかを把握します。この手法によって商品が安全かつ確実に製造されたことがわかるようになり、消費者からの信頼性の向上にもつながります。

内部トレーサビリティは企業や工場など、それぞれの拠点ごとに実施されるトレーサビリティです。家電製品を作る工場であれば、パーツの仕入・組立・検品・納品までをひとつの企業の中で追跡します。内部トレーサビリティによって製造の効率化や問題発生への対処が容易になり、製品の品質向上にも役立ちます。

トレーサビリティはIoTの導入によって効率的かつ確実な追跡と遡及が可能になるシステムです。製品や食品の安全性と信頼性の向上にはもちろん、産地偽装や不良品回収などのリスクも防ぐことができます。ぜひこの機会にIoTの導入やトレーサビリティの強化に取り組んでみませんか?

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