経営戦略
就活生の企業選びのポイントはどのように変化しているのか?
就活生が自身の就職先を選ぶとき、企業のどこに着目し、どのようなポイントをとくに重要と考えているのでしょうか。時代とともに変わるその傾向を知れば、人材確保はもちろん、企業イメージと企業価値の向上にも役立ちます。就活生の企業選びはどのように変化してきているのか、そのポイントを解説します。
就活生が企業選びにおいて重視するポイントとは
就活生が企業選びをする上で、「自分のやりたいことができる」と「経営が安定している」という2点は、ここ数年必ず上位に挙がるポイントです。
やりたい仕事や職種に就きたい、やりたいことをやらせてもらえるような風通しの良い企業に就職したいという思いが強い学生は多く、さらにそれが経営の安定した企業であればより望ましい、というのが就活生の基本的な考え方のようです。
また近年は上記に加えて、「福利厚生」や「勤務制度」、「休日の多さ」を重視する声も増加しています。こちらは文系理系、男女関係なく見られる傾向です。
福利厚生や勤務制度は企業の良し悪しを見定めるためのわかりやすく具体的なデータです。楽しく働けそう、雰囲気が良さそうといった点も必ず上位に挙がるポイントですが、外から簡単には見分けられません。そのため多くの学生が福利厚生や勤務制度に着目しているとも考えられます。
「働きたくない企業」の変化
逆に、就活生が働きたくない企業としては、雰囲気が悪い(もしくは暗い)、ノルマがきつそう、休日が少ない(とれない)などがよく挙げられます。
とくに休日が少ない(とれない)、残業が多いといったことを嫌う傾向が最近では強く、プライベートの充実を求めている就活生が多いことが伺えます。長時間労働による過労死やブラック企業の恐ろしさを伝えるニュースを見て、慎重になっている方も多いはずです。
転勤の有無もまた、プライベートな生活を乱すということから、働きたくない企業の条件として挙げられます。とくに共働き世帯が増えている昨今、共働きで転勤となると単身赴任を選ばざるを得なくなってきます。そういったことも影響を与えているかもしれません。
就活生と就活生の親の本音
経済産業省では、健康経営と労働市場の関係性を探るため、平成28年度に就活生と就職を控えた学生を持つ親に対するアンケートを実施しています。
この調査では、就活生に対しては「将来、どのような企業に就職したいか」、就活生の親に対しては「どのような企業に就職させたいか」という質問を投げかけています(回答は3つまで)。
その結果、就活生では「福利厚生が充実している」と「従業員の健康や働き方に配慮している」が1位と2位、親では「従業員の健康や働き方に配慮している」と「雇用が安定している」が1位と2位となっています。どちらの場合もそれぞれの回答が全体の4割以上を占めています。
また、最近の就活生は親の意向や意見を参考にする傾向が強くなっているのも特徴と言えます。同じく経済産業省の調査で、就活生に「就職にあたり親の意見を参考にするか」という質問をしたところ、「ある程度参考にする」「非常に参考にする」が合わせて約70%となりました。これは就職先を検討する上で親の持つ企業イメージや情報が就活生に重要な影響を与えているということを示しています。
就活生とその親の双方が、今後就職する企業に対して「従業員の健康や働き方への配慮」を強く求めています。そしてこの点について親は就活生にアドバイスを送っており、就活生もその意見を受け入れていると考えられます。
企業に求められるのは働きやすい環境の整備
さて、では休日の多さ、福利厚生や勤務制度、従業員の健康・働き方への配慮といったポイントがこれほどまでに重視されるようになった背景には、どういったものがあるのでしょうか。
ここ数年、長時間労働やいわゆるブラック企業の実態がメディアの報道やSNSによる拡散などで広く知られるようになり、社会問題化していきました。そのことが就活生やその親の意識に強い影響を与え、「長時間労働やブラック企業と呼ばれるところに就職するのは嫌だ」という反応を引き起こしているのでしょう。
そのため企業選びに際しても、ネガティブな要素がないか、従業員のことを考え、健康や働き方に配慮してくれる企業かどうかを慎重に見極めようとしていると考えられます。
今後、労働力を確保するためには、就活生のこうした傾向や着眼点に十分な注意を払う必要があります。しかもそれだけではありません。働きやすい環境の整備は、消費者や顧客、取引先などを含めた社会の多くの人々の注目ポイントともリンクしていると言えます。企業イメージやブランドイメージを高めるためには、外部に対して情報を発信するだけではなく、社内の体質改善を進めていく必要があるかもしれません。
就活生の就職先選びのポイントは時代とともに変化し、現在ではとくに企業に対して働きやすい環境の整備・構築を求めていることがうかがえます。これを機に自社の制度や働く環境を見直し、従業員の働き方についても改善すべき点がないか考えてみてはいかがでしょうか。
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