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経営戦略

SDGsとは? 17の国際目標と国内における企業の取り組み

メディアなどで「SDGs(持続可能な開発目標)」という言葉を目にする機会が増えています。SDGsとはそもそもどのようなものなのか、その概要や日本国内の取り組み状況について説明します。

  1. SDGs(持続可能な開発目標)とは
  2. 17の国際目標
  3. 日本国内における企業のSDGsへの取り組み

SDGs(持続可能な開発目標)とは

2015年、ニューヨーク国連本部で150を超える加盟国首脳が参加する「国連持続可能な開発サミット」が開催され、その成果文書として「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。

SDGsとは、その文書に記載されている2030年に向けた世界の目標です。SDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、「エス・ディー・ジーズ」と読みます。

それより前には、2001年に策定された「MDGs(ミレニアム開発目標)」がありました。MDGsは発展途上国向けの8つの開発目標を掲げていましたが、達成期限として設定された2015年時点で乳幼児や妊産婦の死亡率など未達成のものが存在しました。そのことを踏まえて、SDGsでは、今後の「持続可能な開発」という問題と統合した普遍的な目標が掲げられたという経緯があります。持続可能な開発とは「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」とされています。

新聞社や広告会社の調査によると、日本における一般の人々のSDGsの認知度は3割程度に達しているようです。とくに20代など若い人や学生の注目度が高いという結果も出ています。一方、企業経営者を対象とした認知度調査では、経営者の9割がSDGsについて知っていて、SDGsに関わる取り組みをしている企業は6割を超えていると報告されています。

そもそも、SDGsは各国政府や関係機関だけではなく、企業が積極的に関与し、主体となって課題解決に取り組むことに大きな期待が寄せられています。SDGsへの取り組みは企業の新規市場開拓や事業機会創出につながる可能性があり、投資家や顧客・消費者に対するイメージアップ、従業員のモチベーションアップも期待できます。今後は中小企業にもそうした認識が広まっていくものと考えられます。

17の国際目標

SDGsでは17の国際目標と169のターゲット(目標ごとに、具体的に何をどうするかが示されたもの)が掲げられています。そのうち、17の国際目標は以下のとおりです。
※外務省「パンフレット:持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取組」より

目標1「貧困」:あらゆる場所あらゆる形態の貧困を終わらせる
目標2「飢餓」:飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
目標3「保険」:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
目標4「教育」:すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する
目標5「ジェンダー」:ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児のエンパワーメントを行う
目標6「水・衛生」:すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
目標7「エネルギー」:すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
目標8「経済成長と雇用」:包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
目標9「インフラ、産業化、イノベーション」:強 靭(レジリエント)な インフラ構築 、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
目標10「不平等」:国内及び各国家間の不平等を是正する
目標11「持続可能な都市」:包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
目標12「持続可能な消費と生産」:持続可能な消費生産形態を確保する
目標13「気候変動」:気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
目標14「海洋資源」:持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
目標15「陸上資源」:陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
目標16「平和」:持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
目標17「実施手段」:持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

17の国際目標は、世界が直面している検討課題(アジェンダ)を網羅的に示したものです。これらは大きく、(1)貧困や飢餓、教育などの社会面の開発アジェンダ、(2)エネルギーや資源の有効活用、働き方の改善、不平等の解消などの経済アジェンダ、(3)地球環境や気候変動など地球規模で取り組むべき環境アジェンダという3分野のアジェンダに分けられます。

また169のターゲットは、17の国際目標を達成するための具体的な課題項目が挙げられています。

日本国内における企業のSDGsへの取り組み

日本政府は2016年5月に「SDGs推進本部」を設置し、同年12月にSDGs推進のための中長期戦略である「SDGs実施指針」を策定しています。また、2019年12月に行った同方針の改定では、SDGsの17の国際目標を日本の文脈に即して再構成した8つの優先課題と主要原則として提示しています。

2017年からは、SDGs達成に資する優れた取り組みを行っている企業・団体などを表彰する「ジャパンSDGsアワード」を実施しています。さらに2018年からは内閣府地方創生推進室が、SDGsの達成に取り組んでいる都市・地域を「SDGs未来都市」として選定して上限4,000万円の補助金を交付、2020年までに全国各地の93都市が選ばれています。

経済界では、経団連が2017年にソサエティ5.0の実現を通じたSDGsの達成を柱として「企業行動憲章」を改定しています。10原則の1に「イノベーションを通じて社会に有用で安全な商品・サービスを開発、提供し、持続可能な経済成長と社会的課題の解決を図る」と記し、企業に対してイノベーションとSDGsの両立を呼びかけています。

国内の企業はどのような形でSDGsに取り組んでいるのでしょうか。まず傾向として、多くの企業では、SDGsを自社の企業理念や事業との整合性を判断するためのチェックリスト、いわば「棚卸し」のための手段として活用しているようです。企業理念や事業内容がSDGsとマッチしていれば、自社の考え方をベースに、また事業展開を通じてSDGsへの取り組みを実践できる方法が見つかるはずです。

そんな中、SDGsを企業理念、経営戦略へ積極的に取り込んで、本業化する企業も現れています。その場合、SDGsを契機として社会貢献を果たすとともに企業価値の向上を図り、ブランディングにも役立てるといった目的を設定するケースが多いようです。

外務省の「JAPAN SDGs Action Platform」というサイトには、さまざまな企業、自治体、NGO、NPOなどのSDGs取り組み事例が掲載されています。その内容を見れば、実際に各企業が自社の企業理念や事業内容とSDGsをマッチングさせ、目標実現のための力になろうとしていることがうかがえます。SDGsに関心のある企業にとってこれらの事例は大いに参考になるでしょう。

SDGsの17の国際目標は高い理念と切実な問題意識によって掲げられているものですが、些細な活動から取り組みを始められる項目も少なくありません。あなたの会社でもSDGsへの取り組みを考えてみてはいかがでしょうか。

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