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RPA導入で成功するための注意点や進め方を詳しく解説

人間が行う事務作業を自動化し、サポートする夢のシステムとして紹介されることも多いRPA。しかし、その導入には慎重な準備と精細な検証作業が必要です。
RPA導入を成功させるために必要なポイントと、導入フロー・プロセスについて解説します。

  1. RPAとは? 概要と仕組み
  2. RPA導入のメリット
  3. RPA導入の課題や注意点
  4. RPAで自動化しやすい業務
  5. RPAを導入する際の注意点
  6. RPA導入の進め方

RPAとは? 概要と仕組み

RPAとはどのようなものなのか、まずはその概要と仕組みを説明します。

概要

RPA(Robotic Process Automation)とは主に事務作業(ホワイトカラー作業)の効率化を目的とした、ソフトウェアロボットの活用によって定型業務の自動化を実現する技術です。

例えば、ある人が日常的に行っているPCを使った処理手順をRPAツールに登録すれば、その定型業務をRPAツールが自動的に遂行できるようになります。RPAツールはこのように、人間がPCで行っていた作業の手順を、登録されたとおりに再現して自動的に実行するという機能を持つソフトウェアです。

仕組み

RPAツールを利用するには、アクションを登録して動作シナリオを作成し、変数値や繰り返し制御などの設定を行い、ロボットの動作が期待と異なる場合はデバッグして、最終的に自動化させる内容を完成させる、といった作業を行います。

こうした登録・設定作業を行う際は、コードを記述するなどの専門的なプログラミング知識は基本的に不要です。多くのRPAツールはレコーディング機能を備えており、人間がPC上で実際に操作を行えば、その操作手順がRPAツールに自動的に記録されます。RPAツールが人間の操作を認識する仕組みには、対象オブジェクト認識、文字イメージ認識、ファイル認識、画像認識、座標指定などがあります。記録したい操作の内容や種類によって、最適な認識方法も変わります。

RPA導入のメリット

RPAの導入は、従来の業務にどのような効果をもたらすのでしょうか。以下、RPAを導入することで得られるメリットを見てみましょう。

1.作業的業務の業務量削減

RPAは、これまで人間が行っていた単純作業を代行するソフトウェアロボットです。PCと情報システムを使用して、大量のデータを一定のルールの下で処理する定型作業や、ルーチン作業と呼ばれるような作業が得意で、人間よりも正確に、長時間にわたり決まった作業を続けることができます。
RPAを導入すれば、これまで従業員に課せられていた単純作業の業務量を劇的に削減することが可能です。人力では複数人で数日間かかっていたような作業が、RPA導入によって半日程度で完了するようになるといった効果が期待できるのです。

2.ヒューマンエラーの防止

人間が単純作業を繰り返すことで発生する問題として「ヒューマンエラー(作業ミス)」が挙げられます。例えば、情報を転記するだけの作業であったとしても、誤字や数字の入力ミスなどは完全に防ぐことができません。
しかし、RPAはソフトウェアロボットであるため、人間が手作業するよりも正確かつ素早く作業を行えます。事前にルールをしっかりと定めておけば、そのルールに従って処理を行うため、ミスをすることがないのです。ヒューマンエラーを回避するためにチェックする作業も省略でき、ヒューマンエラーを防止する点でも業務の効率化に貢献します。

3.コスト削減

人間が作業をする場合、どんな単純作業であっても人件費がかかります。特に定型資料を大量に作成する場合などは作成だけでも多くの時間がかかり、チェックやミスの修正などにも手間がかかっていました。RPAは単純作業であれば人の代わりとして作業を実施できるため、人件費の削減が期待できます。
忙しいときには増員して対応していた作業でも、RPAを用いれば増員することなく対応できるようになります。従来、残業してまで行っていた作業を24時間365日稼働可能なRPAに任せることで、残業を減らしてコストを削減する、ということも実現可能です。

4.創造的作業の業務量増大

RPAによる代行により単純作業から解放されることで、従業員はより創造的な作業に集中できるようになります。RPAでは代行困難なクリエイティブな作業、例えば、研究開発や企画立案といった領域を人間が担当し、その部分の業務量を増やすことで企業力を向上させることができます。
さらに、RPAとマンパワーとの連携も大きな効果を生み出します。例えば、RPAが決められた時間ごとに情報システムからデータを抽出、決められたルールに従って処理した上で従業員に渡すと、そのデータを参照しながら従業員が判断して、臨機応変に対応していくといった作業プロセスを作り出すことが可能になります。これもまた、ある種の創造的作業といえるでしょう。

RPA導入の課題や注意点

さまざまなメリットをもたらすRPAですが、実際に運用する際にはいくつか注意すべき点も存在します。ここでは、導入の課題や注意点について見ていきましょう。

導入コストの負担

RPAそのものの導入費用だけでなく、運用するためにはRPAのルール作成から導入後の利用方法の策定、動作テストなどを行うための人件費もかかります。RPAの導入には専門的な知識が必要になる場合もあるため、外注することも考えられるでしょう。初期導入のコストは決して無視できるものではなく、大きな負担となる点はデメリットの一つです。
また、導入コストに対して、必ずしも見合った効果が得られるとは限りません。費用対効果の面でも、導入時にしっかりと検討する必要があります。

セキュリティ対策が必要

RPAがネットワークと接続されている場合、情報漏えいや不正アクセスなどのセキュリティリスクが存在します。そのため、RPAを運用する上でのセキュリティ対策が欠かせません。
RPA自体が不正アクセスを受けたり、実行するルールに誤りがあり情報漏えいにつながったりする可能性が考えられます。RPA自体を常に最新の状態にアップデートする、機密情報は暗号化して運用する、などのセキュリティ対策が必要です。

RPA活用の定着に時間がかかる可能性がある

RPAを活用することで、人間の業務にも変化が生じます。どこまでをRPAに任せるのか、RPAが実施した結果をどのように活用するのか、といった点も、導入時に検討しておかなければなりません。
RPAの活用により人間の業務も変化することで、新しい作業方法などに戸惑う従業員も出てくるでしょう。導入後、即座に効果を発揮するとは限らず、RPAの活用が定着するまでには時間がかかる可能性を考慮しておく必要があります。

RPAで自動化しやすい業務

RPAによる自動化に適した業務の代表例は、PC上で毎回同じ手順で行われる単純作業です。データの転記、ファイルの印刷・PDF化作業、アンケートなどの集計・加工作業、決められたファイルのアップロード、自動メール配信などが挙げられます。

特に複数アプリケーションをまたいで、クリックを繰り返してデータを受け渡すような作業にRPAは向いています。人間が手作業で行うことも難しくないものの、毎回同じことを繰り返す大変な作業を、RPAに任せて自動化するというイメージです。

RPAを導入する際の注意点

単純作業の自動化によって人間の仕事をサポートするという優れた仕組みである一方、RPAはこれまでなかった管理者による「管理作業」を必要とします。RPAを「デジタルレイバー(仮想的労働者)」と呼ぶことがあるように、RPAを正しく稼働させるには詳細で正確な管理をしていくことが不可欠です。

RPA導入でまず必要なのは、どんな作業をどのようにして進めるのかという作業指示です。人間が行っていたときに曖昧な部分があったとすれば、それを詳細に可視化・明文化しなければなりません。RPAで実行可能なのかを検証し、もしも実行が難しければ仕組みそのものを変え、新たなプロセスを作成することになります。あるいはもっと極端な例では、RPAのために組織自体の再編成が必要となる場合もあります。

このように、RPAの管理とはRPAをスムーズに業務に組み入れるための環境の最適化を図ることを意味します。そのために従来は存在しなかった作業が新しく発生したり、組織を変えることになれば、従業員や会社に負荷がかかり、むしろコストが大きくなってしまうことも考えられます。専門業者に業務や状況に関する分析を依頼し、詳しく検証しておく必要があるでしょう。

また、RPAの導入目標をしっかり設定することも重要です。どの業務を自動化するのかということはもちろん、自動化で何を実現するのかも明確にしておきましょう。RPAを導入して従業員の負担をどの程度減らすのか、その業務に割いていた人員数を何人削減するのかなどの目標設定をすることで、導入後の客観的な評価も可能になるでしょう。

RPA導入の進め方

では、RPAの導入はどのような手順で進めていくのでしょうか。一般的な導入フローのポイントを見てみましょう。

(1)計画

導入検討と準備を行うフェーズです。現状の業務を分析し、導入のために何が必要かを分析します。RPAが関わることになる業務の件数と作業の工数を計測し、どのような方法、製品によって自動化が実現できるかという計画を立てます。また、これらを踏まえた上で、導入目標を具体的に設定しておきましょう。

(2)試行導入/ PoC(Proof of Concept)

導入によってRPAの効果を十分に発揮できるか、デメリットが発生しないかどうかをシミュレーションするフェーズです。計画した方法、製品が実際に業務にマッチするかという適合性検証も行います。いわゆるトライアル導入と考えれば分かりやすいでしょう。

(3)パイロット導入

トライアル導入に続く、導入の準備を整えていくフェーズです。導入後にどのようなプロセスを経て社内での本格運用をスタートさせるか、さらに適用する業務の範囲を拡大していくのかといった「導入後の展開を考えた」具体的な検証をしていきます。また、管理者や業務担当者向けの導入ガイドラインやマニュアルも作成します。

(4)本格導入

本格導入の際、多くの場合は部分的にスタートします。RPAではスモールスタートし、検証して見直し、そこからさらに拡大運用していくという方法をとるのが一般的です。計画からこの本格導入までは、数カ月の期間が必要です。

(5)運用・保守

実際に運用し、保守管理を実施していくフェーズです。管理者や業務担当者の意見もヒアリングし、改善すべき点がないか、さらに検証を続けていきます。

(6)適用業務の範囲拡大

適用業務の範囲を拡大させていくフェーズです。RPAが担う業務の割合を増やしていくのはもちろん、案件によっては複数の部署・部門、あるいは社内全体へとその範囲を広げていくこともあります。

RPA導入を検討するなら、まずそのメリットとデメリットについて把握すること、そして実際の導入に際しては自社の業務をどのようにしてマッチングさせるのか、その結果、十分な恩恵を得られるのかをしっかりと検証することが重要です。

また、RPAはAI(人工知能)ともよく比較されます。最近ではRPAにAIを取り込んで作られたシステムも実用化されています。RPAとAIの違いについて知りたい方は、「RPAとAIの違いとは? 働き方改革における取り入れ方」という記事をご覧ください。

※本記事は、2018年8月24日に公開した「RPA導入する際にすべきこととは?」の内容を更新し、公開しています。

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