セキュリティ
フォレンジックとは? 必要性や調査の内容・手順などを解説

ICT技術が私たちの業務・生活に深く浸透した現在では、有事の際のデジタルな法的証拠の存在は非常に重要になっています。そのため、IT用語として「フォレンジック」という言葉を聞く機会も増えていますが、具体的な内容はよく分からない、という方は多いのではないでしょうか。
この記事では、フォレンジックの概要から調査、分析技術の解説と併せて、実際の適用例をいくつか紹介します。企業におけるサイバーセキュリティ対策の重要性が増す中、フォレンジックは今後のセキュリティ対策の手法として注目されています。
フォレンジックとは?
フォレンジック(Forensic)は「法廷で用いる」「法的証拠に関する」という意味を持つ言葉です。一方で、デジタルフォレンジックは、コンピューターやネットワークなどの電子機器に残る記録を収集・分析し、法的な証拠として活用するための技術や手法、あるいは一連の調査プロセスを指します。このため、サイバーセキュリティインシデント対応において重要な役割を果たします。
法的背景とフォレンジックの重要性
フォレンジック(デジタルフォレンジック)の主な目的としては、次のようなものが挙げられます。
- 不正行為の原因究明
- 不正行為に対する訴訟のための証拠収集
- サイバー攻撃の原因究明
- 不正行為、情報漏えいの防止
今やほとんどの企業でコンピューターを用いてデジタル化された環境下で業務を行っています。そのため、有事の際の対策や防止対策として、フォレンジックによる証拠収集に努める企業が増えています。さらに、クラウド環境の利用が進む中、クラウド上のデータに対するフォレンジックのニーズも高まっていますが、クラウドサービスの特性上、データの保全や取得には制約がある場合もあります。
デジタルフォレンジックとは?
デジタルフォレンジックとは、コンピューターやネットワーク内の情報を収集し、犯罪の法的な証拠を見つけるための捜査です。おおまかに「コンピューターフォレンジック」「モバイルフォレンジック」「ネットワークフォレンジック」の3種類に分けられ、企業内の不正行為やサイバー攻撃によるインシデントに対する証拠の収集・解析などが行われます。デジタルフォレンジックは、フォレンジック調査とは何かを理解する上で重要な要素です。
フォレンジックの調査・分析技術
フォレンジックは「収集」「解析」「分析」「報告」の4つの段階を踏んで行われます。
コンピューターやネットワークからの情報収集
はじめに、コンピューターや記録媒体を収集して保全します。データだけでなく、ハードウェアそのものが調査の対象です。法的な証拠となるため、改ざんなどが起こらないようにハードウェアの中にあるデータを完全にコピーする必要があり「デュプリケーター」と呼ばれるツールが利用されます。ネットワークフォレンジックでは、ネットワーク上のデータの動きも収集、解析します。フォレンジックの手法は多岐にわたり、経験豊富な専門家による支援が不可欠です。
法的証拠としての活用方法
収集した情報はそのままでは利用しづらいため、専門家による解析や分析によって取りまとめられます。この「解析・分析」のフェーズこそが、フォレンジックの中心といえます。単にデータを復元・抽出するだけでなく、ログの時系列を整理し、消去されたファイルの断片をつなぎ合わせ、最終的に「何が、いつ、誰によって行われたのか」という一連の出来事を再構築するためです。こうしたプロセスを経て初めて、収集されたデータは単なる情報の断片から、法的に意味のある「証拠」へと変わります。
社内不正や横領などが発生した場合、フォレンジックによって得られた情報は法的証拠となり、裁判でも有効な情報として扱われます。
セキュリティ事故時の取り組み
サイバー攻撃を受けた場合や、情報漏えい事故を起こしてしまった場合などのインシデントの際にはフォレンジックが役立ちます。例えば、ログから攻撃や不正の痕跡を見つけたり、消去されたデータを復元したりできます。このため、セキュリティ対策として、フォレンジックの導入を検討する企業が増えています。
フォレンジック調査の実際の適用例
フォレンジックの実際の適用例を簡単に紹介します。
企業内のセキュリティインシデント
企業内で横領が発生した場合、社内に複数人の関係者が存在する可能性があります。そのため、関係者と思われる人物のメールのやり取りを収集、分析し、デジタルフォレンジックを進めることも珍しくありません。
その他、情報漏えい事故などのインシデントの発生時には、どんな情報が漏えいしたのか、なぜインシデントが発生したのか、などを解明するためにデジタルフォレンジックが用いられます。このように、インシデントの全容を解明し、根本原因を特定することは、被害範囲の確定や効果的な再発防止策の策定に不可欠です。ひいては企業の情報資産を、脅威から守ることにもつながります。
独占禁止法・競争法違反の調査
カルテルや談合などの独占禁止法、競争法違反の調査にもフォレンジックが用いられます。デジタルフォレンジック調査では、パソコンやモバイルデバイスの保存、削除データの復元などが行われ、関連するデータやコミュニケーション内容も収集、分析されます。
メールやチャットなどの非構造化データや、取引記録などの構造化データを可視化し、収集した情報を、AIによって疑義内容との関連性の高さでスコアリングすることも可能です。
まとめ
フォレンジックは犯罪の法的な証拠を見つけるための捜査であり、デジタル的な法科学の一分野はデジタルフォレンジックと呼ばれます。デジタル化社会が進む中なか、社内不正や横領、サイバー攻撃などのデジタルリスクが増しており、フォレンジックの重要性が高まっています。この記事を参考にフォレンジックの重要性を理解し、インシデント対策に取り組みましょう。
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