テクノロジー
AIによる画像認識の活用事例を紹介

さまざまなシーンでAI(人工知能)による画像認識が活用されています。画像認識技術は現在どのようなことに役立ち、今後、何を実現しようとしているのか、予測しきれないほどの可能性を持つといわれる画像認識の現状とこれからについて考えてみましょう。
画像認識のAI
画像認識とは、画像に写っているものの特徴を把握し、それが何であるかを識別して判断するための技術です。
画像や音声など、雑多な情報の中から一定の規則や意味を持つ対象を識別することを「パターン認識」といい、画像認識はそのパターン認識技術の一つだと捉えられます。パターン認識は人間の脳が人の顔を見分けたり、声を聞き分けたりする上でごく自然に行っている工程であり、近年ではその処理をAIで行うことができるようになっています。
AIによる画像認識が可能となった背景には、ディープラーニング技術の進歩が大きくかかわっています。現在、ディープラーニングによる画像認識の正解率は95%以上で、人間の能力を超えるレベルに達しているともいわれます。
ディープラーニングでは、まずコンピューターに膨大な量の画像データと、画像データが何を表しているのかを示すラベルを与え、学習させる必要があります。このとき使われるのが機械学習と呼ばれるアルゴリズムです。学習が進むと、コンピューターは新しい画像を読み取って対象物を認識し、それが何であるかを回答できるようになります。コンピューターはそのとき、例えば「猫である確率95%」のような表現で回答します。
このような処理能力を持つようになったコンピューターは、AI機能を構築されたマシンといえます。AI技術による画像認識は現在、対象物が何であるかだけではなく、その個数や色、移動、状態、異常などを認識・検知できるようになっています。対象物が物体ではなく人物であれば、その人の性別、年齢、表情までも判断できるようになってきています。
AIによる画像認識の活用事例
AIによる画像認識は、すでにさまざまな分野で活用が進んでいます。代表的な事例を見てみましょう。
顔認証システム
顔認証システムと聞いて多くの人が思い浮かべるのは、入退室管理での活用例でしょう。カメラに映った人物の顔が登録された顔と一致するかどうかを瞬時に判断し、ドアのロックを解除するものです。スマートフォンの顔認証によるロック解除も原理は同じです。
また、顔認証システムは音楽ライブの入場や、コンビニエンスストアの店舗管理端末の使用者認証、アメリカでは監視カメラ映像と過去の犯罪者の顔画像との照会システムなども実用化されています。
外観検査
外観検査とは、工場などで検品を行う際、製品や部品の表面にある異常や欠陥を確認する検査のことです。例えば食品に付着した物、衣類に付着した汚れ、素材についた傷、樹脂やゴム成形時に発生する欠け・バリなどが対象となります。
近年の自動化が進んだ工場では、この外観検査に画像認識技術を用いた画像処理システムが導入されています。人間の目視による検査よりも確実かつスピーディーに微細な異常を判別することが可能で、学習することによってその精度を上げることもできます。
医用画像診断
医療分野では、がん、脳血管の狭窄や動脈瘤、網膜症、手首の骨折などの発見や状態確認にAIによる画像認識技術が応用され始めています。例えば、がんの場合は画像内の腫瘤の存在と位置を示し、それが良性か悪性かの判定もできるところまできています。
今後はより多くの医用画像が集まりデータベースが充実していくことで、AIによる診断システムの開発も進んでいくと考えられています。やがてはスマホに超音波検査装置を接続し自宅で撮影して送信すればAIが診断するというような検査アプリも実現可能になると期待されています。
画像内の文字の翻訳
画像認識技術によって、画像内に表示されている文字を読み取って翻訳するという仕組みもあります。画像翻訳とも呼ばれるこの仕組みを使うと、海外旅行に行ったときにその国の言語で欠かれた注意書きやメニューをその場で翻訳して理解することができます。実際に、「Google翻訳」というスマホアプリを使えば、撮影した画像から外国語のテキストを読み取って、日本語に訳すことが簡単にできます。
AIによる画像認識のこれから
ここまで見てきたように、AIによる画像認識の活用分野は幅広く、今後その可能性はさらに広がっていくものと考えられます。
最新の画像認識では、AIが画像を読み取って解析し「誰が何をしているところなのか」までを判別できるようになっています。あるいは人物の表情や態度、瞳孔の状態などを認識・判別することで、その人が今、どのような感情を持っているのかをAIが把握することも可能になってきています。
こうした技術がさらに錬成されていけば、さまざまな業務における生産性の向上、安全性の確保、マーケティング、機械の自動制御などの分野でますます活用が進んでいくことでしょう。すでに完全自動運転車、事故防止システム、顧客来場者分析システムなどで、画像認識は欠かせない技術となっています。
AIによる画像認識はすでにさまざまな生活シーン、ビジネスシーン、生産現場、医療分野などで活用が始まっています。今後も新たなサービスを生み出すことは確実です。その動向を注視しておきましょう。