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AI資格「人工知能プロジェクトマネージャー試験」について解説

人間に代わって思考や分析を行う「AI」。人工知能とも呼ばれていますが、AIをビジネスや業務で使うためには専門的な知識が必要になります。ここでは、AIのプロを育成するために実施されている「人工知能プロジェクトマネージャー試験」について紹介します。
人工知能プロジェクトマネージャーの概要
人工知能プロジェクトマネージャー試験とは、一般社団法人 新技術応用推進基盤が実施する資格試験です。AI(人工知能)をビジネスに利用する際に必要なさまざまなスキルを備えた人材の育成を目的として創設されました。
プログラミングを学んでシステムを開発できるプログラマーやエンジニアは増えていますが、開発者だけではビジネスを成功させることはできないとして、AIの普及に合わせて人工知能プロジェクトマネージャーの需要が高まっています。
どれだけ高機能な人工知能を作ろうと、それを活かす場所、達成すべき目標があいまいだとプロジェクトとしては失敗に終わってしまいます。また、AIのプロジェクトを成功させるためには、プロジェクトを推し進める力、出てきた課題への対応力、法令への理解なども必要となってきます。こういったスキル・知識を持つ人材はまだまだ多くはないといえるでしょう。そんな中、人工知能プロジェクトマネージャーのような資格が価値をもってきます。
人工知能プロジェクトマネージャーは、社内だけではなく社外との折衝や出向先での活躍も期待されています。まさに多方面に活かすことができる能力をもった人材といえるのです。
人工知能プロジェクトマネージャー資格の対象者
人工知能プロジェクトマネージャー資格は、受験資格は設定されていないため誰でも受験することができます。しかし、資格保持者を求める企業側からは、進行中のプロジェクトに対して有益な分析を行い、結果を残すことが期待されているため、試験に出題される知識だけではなく実際の業務についても深い理解と経験が求められる傾向にあります。そのため、ビジネスに携わっている管理職向けのAI資格だといえるでしょう。
人工知能プロジェクトマネージャーの試験内容
人工知能プロジェクトマネージャー試験は7つの分野から構成、出題されているため、、すべてを網羅している必要があります。
分野A
分野Aは「目標設定能力」を問う分野です。架空の例を題材に、人工知能を理解し発展させるための思考力が備わっているかを確認します。人工知能でどんな課題が解決できるか、そしてその課題は組織全体にどのような意味を与えるのか、どんな状態になれば問題が解決したといえるのかを問われます。
分野B
分野Bは「課題解決能力」を問う分野です。プロジェクト進行中に発生したさまざまな問題についての対処能力を確認します。たとえば、突然の仕様変更が起きたとき、どのように対応するか(対応するべきか)、万が一目標に到達しないと判断されたら、どう対処するかについて回答します。
分野C
分野Cは「統計的理解」を問う分野です。統計モデルの基礎である回帰分析や機械学習モデルのSVM(サポートベクターマシン)などの手法について理解できているか、回帰分析などに用いられる目的変数(因果関係の結果となる変数)と説明変数(目的変数を説明する変数)の選択ができるかが問われます。
分野D
分野Dは「統計理解の実装力」を問う分野です。Pythonなど、AIを開発するためのプログラミング言語への理解力や各種ライブラリへの理解および利用力、統計ツールについての理解度を確認します。
分野E
分野Eは「システム構築能力」を問う分野です。一例として、セキュリティを担保したうえでデータベースをどのように構成するか、商用化におけるモデルアップデートの方法など、システム構築に関する内容が問われます。
分野F
分野Fは「プロジェクト遂行能力」を問う分野です。プロジェクトマネージャーとして、プロジェクトの進行やマネジメントに関する推進能力を確認します。稼働管理・遅延リスクの予測・解決策の提示力といった部分が出題されます。
分野G
分野Gは「法令理解」を問う分野です。人工知能を使ったプロジェクトに必要な法令知識が備わっているかをチェックするもので、データやモデルの所有権・プロジェクト内における技術的発見の所有権・秘密保持契約などが出題されます。
そのほかのAI関連資格
AI関連の資格はほかにも以下のようなものがあります。詳しく見ていきましょう。
G検定・E検定
「G検定」は一般社団法人 日本ディープラーニング協会が主催する資格で、AIの知能である「ディープラーニング」の基礎知識をもち、活用方針を決定してビジネスに活用するための人材を育成する資格試験です。同協会では、ディープラーニングの理論を理解しながら適切な手法で実装できるかを問う「E資格」も実施しています。
Pythonエンジニア認定データ分析試験
一般社団法人 Pythonエンジニア育成推進協会が実施する「Pythonエンジニア認定データ分析試験」はAI開発に欠かせないプログラミング言語であるPythonの専門知識を評価するための試験で、基礎試験とデータ分析試験の2科目から構成されています。
AIをビジネスに活用するためには、目標の設定から分析、実行、結果の確認や振り返りなど、一連の流れを追える人材の育成が鍵となります。自社でAIを戦略的に活用していくための一歩として、資格取得を検討してみるのもよいでしょう。