テクノロジー
デジタル・ガバメントの意味・目的や実行計画についてわかりやすく解説
政府が主導する「デジタルファースト」、「ワンスオンリー」、「コネクテッド・ワンストップ」を三原則とする「デジタル・ガバメント」という取り組みが具体化しつつあります。その目的はどこにあるのか、どのような実行計画が推進されようとしているのかなど、デジタル・ガバメントについて知っておくべきことについて解説します。
「デジタル・ガバメント」の意味・概要
デジタル・ガバメントとは、デジタル技術の活用と官民協働によって行政サービスを見直し、行政のあり方そのものをデジタル社会に対応したものに変革させていくという政府による取り組みのことです。
日本の行政手続きにおけるデジタル化・オンライン化の遅れはかねてより問題視されていました。その背景には政府や行政機関の縦割り構造、デジタル人材の不足、利用者視点の欠如などの問題があると指摘されています。
「行政のあり方そのものを変革させていく」ことを掲げたデジタル・ガバメントという取り組みあるいは構想は、そうした現状を打破するための行政版DX(デジタルトランスフォーメーション)とも呼べるものです。
デジタル・ガバメントの目的
デジタル・ガバメントは単に情報システムを構築し、手続きをオンライン化することのみを目的とするものではない、とされています。それらも当然実現すべきですが、大きな目的は一連のサービス全体を利用者から見て利便性の高いものにすることです。
利用者が各種行政サービスをすぐに使え、簡単で便利なものとして認識するようなデジタル化を成し遂げたいというのが政府の考えです。すなわち、「すぐ使えて」「簡単で」「便利な」行政サービスを提供することが掲げられています。
また、そのことにより、「国民一人ひとりがSociety 5.0時代にふさわしい行政サービスを享受できるようにすること」も目的に含まれています。
Society 5.0とは、内閣府によれば、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」のことです。
逆にいえば、デジタル・ガバメントを実現しなければ、日本がめざす未来社会像であるSociety 5.0へ到達することは難しいということになるでしょう。
デジタル・ガバメント実行計画とは
デジタル・ガバメント推進の大きな契機となったのが、2017年5月に策定された「デジタル・ガバメント推進方針」、そしてそれに続き2018年1月に策定された「デジタル・ガバメント実行計画」です。同実行計画は2020年12月に改定されました。
デジタル・ガバメント実行計画には、「デジタルファースト」、「ワンスオンリー」、「コネクテッド・ワンストップ」という「デジタル化3原則」と呼ばれる方針が示されています。簡単に説明すると、デジタルファーストは行政手続きをデジタルのみで完結させるという方針、ワンスオンリーは申請者が情報の提出を一度ですませられるようにするという方針、コネクテッド・ワンストップは複数の行政機関などにまたがる手続きも一度の申請で完了できるようにするという方針です。
また、最新のデジタル・ガバメント実行計画では、以下の7つについて取り組んでいくとしています。
サービスデザイン・業務改革(BPR:Business Process Re-engineering)の徹底
「すぐ使えて」「簡単」で「便利」な行政サービスの100%デジタル化を目標とする。
国・地方デジタル化指針
「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ報告」に基づいて推進する。
デジタル・ガバメント実現のための基盤整備
政府全体で共通利用するシステム、基盤、機能等(デジタルインフラ)を整備する。また、クラウドサービス利用の検討、情報セキュリティ対策の徹底、個人情報の保護、業務継続性の確保などを推進する。
一元的なプロジェクト管理の強化等
デジタル庁の設置に加え、すべての政府情報システムについて、予算要求前から執行までの各段階における一元的なプロジェクト管理を強化する。
行政手続のデジタル化、ワンストップサービス推進等
行政手続きのオンライン化、各手続きにおける添付書類の省略、各種手続きについてワンストップサービス推進、法人デジタルプラットフォームの機能拡充などを実現する。
デジタルデバイド対策・広報などの実施
デジタル活用支援員の仕組みを本格的に実施する。SNSや動画などを使った広報を行い、国民参加型イベントなどを実施する。
地方公共団体におけるデジタル・ガバメントの推進
自治体の業務システムの標準化・共通化を加速、地方公共団体の行政手続きのオンライン化推進、「自治体DX推進計画」に基づいた自治体の取り組みの支援する。
デジタル・ガバメントは企業にどのように影響するのか
デジタル・ガバメントが推進されると、企業もそれに対応できるようにデジタル化を進める必要が出てきます。
例えば2020年4月から、一定規模以上の企業などについては社会保険・労働保険の手続きに関して電子申請が義務化されています。今後、中小企業もその対象となっていくと予想されます。
「デジタルファースト」、「ワンスオンリー」、「コネクテッド・ワンストップ」の3原則が徹底されていくにつれ、企業もデジタルやオンラインによる手続きに必要な体制を整えていくことになるでしょう。デジタル・ガバメントによる利便性を正しく活用できるようになれば、自社の業務効率化も進んでいくことになるはずです。
デジタル・ガバメントは官民全体、さらにいえば国民全体を含めたデジタル変革への取り組みだといえます。自社のデジタル化も着実に進めていきながら、今後の動向に注目しておきましょう。
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