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テクノロジー

エッジAIとは? 人工知能が産業にもたらす可能性

AIの活用が広がるにつれて注目を集めるようになったのが「エッジAI」です。従来の「クラウドAI」とは異なる特徴を持ち、とくに自動運転や産業用ロボット制御において力を発揮することが期待されています。エッジAIとはどのような技術なのか、その概要と今後の産業にもたらす可能性について解説します。

  1. エッジAIとは
  2. エッジAIが注目される理由
  3. エッジAIの産業における活用

エッジAIとは

エッジAIとは、エッジ(端)に搭載されているAIを意味します。エッジとは車やIoTデバイスなどに代表される端末(エッジデバイス)のことです。

現在、GAFAなどが展開するAIプラットフォームは、そのほとんどがクラウドによって提供されています。クラウドコンピューティングを活用する形であれば大量のデータをネットワーク経由でデータセンターなどに送信し、スケーラブルに蓄積して、データセンター内のCPUやGPUパワーで高速処理して学習・推論することができます。このように、クラウドコンピューティングを活用するタイプのAIを「クラウドAI」と呼ぶことがあります。

しかし、たとえばIoTでエッジの近くで発生する現象をセンサーなどで捉えてネットワークを介してデータとしてクラウドに送り、AIが処理してその結果を再びエッジ側にリターンするとなると、そのプロセスでタイムラグが発生することになります。このわずかな通信遅延と、大量データをネットワークで送信する際に帯域を圧迫するという2点が、クラウドAIの弱点でもあります。

そこで、2つの弱点を解消するために考え出されたのが「エッジAI」です。各種の端末自体にAIを搭載すれば、その場で複雑な処理を行えるようになります。

クラウドコンピューティングと対になる言葉としては、エッジコンピューティングという表現があります。エッジコンピューティングはIoT用語としてよく出てくる言葉で、「端末の近くにサーバを分散配置する技法」という意味があります。端末やユーザーの近くにあるコンピューター(またはAI)を使ってデータ処理することで、上位システムの負荷を軽減し、通信遅延を解消できるようになります。

エッジAIが注目される理由

エッジAIが注目されるようになった背景には、IoTの普及が進んで膨大なデータをリアルタイムで処理する必要性が高まってきていることが挙げられます。

通信遅延は5G(第5世代移動通信システム)の登場などによって従来よりも大幅に抑えられますが、それでも数ミリ秒単位の遅れはあり、完全とはいえません。とくにファクトリーオートメーション(FA)、車の自動運転などの分野では、限りなくリアルタイムに近い高速応答性が求められます。AIが学習しながら推論や解析をし、反応するという一連の処理が少しでも遅れれば、そのことが致命的な結果を生むようなシーンも考えられます。

また速度だけではなく、通信にはさまざまなリスクが伴います。インターネット回線が途切れたり、届きにくかったりするような環境下でのAI運用を余儀なくされる事例もあるでしょう。インターネットを介してデータを送信したりクラウド上にデータを置いたりしたくないなど、非常に高度なセキュリティが求められるケースも想定されます。

エッジAIにもいくつか種類がありますが、クラウドを利用しないスタンドアローンでの稼働が可能であれば、そうした通信に関わる諸問題を解決できます。あるいは状況に応じてクラウドAIとエッジAIの使い分けるという選択肢も生まれます。

エッジAIの産業における活用

今後、エッジAIの利用が急速に進むと考えられるのが、自動運転と産業用ロボットです。

自動運転において通信遅延が致命的な問題となることは容易に想像できるでしょう。センサーや画像認識によって周囲の車や歩行者を捉え、アクシデントが生じたときに瞬時の判断で危険を回避するには、車自体に搭載したAIが必要です。コンマ数秒の遅延は大事故につながりかねません。また障害物の検知と回避行動、周囲の環境変化への対応などにもエッジAIは役立ちます。同様の技術はドローンの自動操縦などでも活用できます。

工場で製品の組み立てなどを行う産業用ロボット(産業用IoT)においても、エッジAIが大きな役割を担います。エッジコンピューティングを用いると、対象物の状況をセンサー群によってデータとして取得し、常に推論による状況把握をしながらリアルタイム制御できるようになるからです。このことにより、製造現場におけるマスカスタマイゼーション(特注品の大量製造)などが可能になるでしょう。また連続的に機器の状態を計測・監視しながら劣化状態などを把握して部品交換や修理を行う「予知保全」や、製造現場における人間との共同作業もスムーズに進むようになると考えられます。

「現場の近く」で活躍するエッジAIは、クラウドAIと役割分担することでより幅広い需要に応えることができます。

自動運転用の車や産業用ロボットにエッジAIを組み込むための技術は、すでに多くの企業で研究開発が進められています。エッジAIは今後、産業に大きな可能性をもたらすでしょう。エッジAIの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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