ページの本文へ

テクノロジー

マルチモーダルAIとは? 仕組みや活用事例などを解説

テキストだけ、画像だけを処理するAIの時代は終わりつつあります。近年注目を集めているものは、複数の情報を同時に処理できる「マルチモーダルAI」です。人間が五感を駆使して情報を理解するように、AIも複数の情報源から総合的に判断できるようになってきています。
この記事では、マルチモーダルAIの基礎知識からビジネスへの活用事例まで解説します。

  1. マルチモーダルAIとは?
  2. マルチモーダルAIの仕組み
  3. マルチモーダルAIのビジネス活用事例
  4. マルチモーダルAIの理解を深め活用していきましょう

マルチモーダルAIとは?

はじめに基礎知識として、その概要から従来のAIとの違い、注目される背景について見ていきましょう。

マルチモーダルAIの定義

マルチモーダルAIとは、テキストや画像、動画、センサー情報など、さまざまな種類の情報(モダリティ)を横断して処理できるAIのことです。例えば、患者の診療記録や問診内容といったテキスト情報と、レントゲンやMRIなどの医療画像データを同時に処理し、より正確な診断支援を実現できます。このように、マルチモーダルAIは複数のモダリティを統合処理することで、より高度な理解や判断を実現するAIです。

マルチモーダルAIとシングルモーダルAIの違い

シングルモーダルAIは、1種類のデータのみを処理するAIであり、従来のAIが該当します。例えば、テキストデータの処理を行うシングルモーダルAIは、動画や画像などのデータを処理できません。
一方、マルチモーダルAIは複数種類のデータを一度に処理できるため、テキスト・画像・動画などを同時に扱えるのです。これにより、シングルモーダルAIに比べて、相互補完や豊かな表現が実現できます。

マルチモーダルAIが注目される背景

従来のAIは主に文章・画像などの1種類の情報源だけを利用して処理結果を出力するものでした。しかし、近年ではユーザーのニーズがより高度化し、複雑になってきています。そのため、単一の情報源からのデータだけでは、これらの複雑な要求に対応するための十分な情報を得ることが難しくなってきているのです。
また、将来的に実現する可能性のある、より高度なAIである「汎用型AI(AGI)」に向けた重要なステップとしても注目されています。人間のような知能を実現するためには、複数のモダリティを理解して複数のタスクを処理する能力が欠かせないからです。

マルチモーダルAIの仕組み

ここでは、マルチモーダルAIの仕組みについて簡単に解説します。

複数モダリティの統合処理とは

最大の特長は、複数の異なるデータ形式を個別に扱うのではなく、それらを一体として総合的に解析できる点です。そのために、AIはそれぞれのデータを個別に理解するための「エンコーダ」を使って特徴を抽出します。
具体的には、まず画像や音声などの各モダリティの特徴量を抽出(エンコード)してマッピングします。その後、マッピングした特徴量とテキストの特徴量をLLM(大規模言語モデル)に知識として与え、演算された特徴量を変換(デコード)して形式をモダリティに合わせる、という流れです。

代表的な技術とAIモデル

代表的なモデルとしては、OpenAIのChatGPT(GPT-4o)やGoogle DeepMindのGeminiなどが挙げられます。Geminiはテキストや画像、音声、動画などを統合的に処理できる点が特長です。ユーザーインターフェースやクリエイティブなコンテンツ生成に強みを持っており、入力内容に応じて最適な情報を提供できます。
一方、ChatGPT(GPT-4o)もテキスト・画像・音声の処理にたけており、人間の会話に近い速度で応答し、自然なコミュニケーションを実現します。対話形式のやり取りを通じて、状況に応じた画像や音声を自動的に作成できるため、ユーザーと双方向的かつ自然なコミュニケーションを実現可能です。

マルチモーダルAIのビジネス活用事例

マルチモーダルAIはビジネスでの活用も進んでいます。各種業界における活用事例を簡単に解説していきます。

製造・物流業界での品質管理や異常検知

製造現場や物流センターでは、設備の故障や製品の欠陥を検出するためのツールとして、マルチモーダルAIが積極的に採用されています。例えば、さまざまなセンサーを用いて振動、温度、湿度などの情報を収集し、これらのデータを画像や音声情報と統合的に分析することで、機械の異常音や部品の劣化、不要物の混入といった問題を早期に検出することが可能になります。

小売・接客業での画像×音声による接客AIの進化

小売業界などでは、顧客一人ひとりに合わせた最適な商品提案や情報提供が求められます。マルチモーダルAIを活用することで、顧客の閲覧履歴、商品画像、レビュー動画、店舗内での行動データなどを統合的に分析することが可能です。精緻なレコメンデーションの提供はもちろん、対話型のチャットボットによる接客や、顧客の感情状態に配慮した販促施策の展開など、よりパーソナライズされた購買体験を提供できます。

医療分野での画像×テキスト×数値情報の統合診断支援

医療分野では、マルチモーダルAIによって画像診断の精度を高める検討が進んでいます。例えば、肝臓の超音波画像と患者情報を統合することで、見つかった腫瘍が良性か悪性かの判別が高精度にできるようになった事例があります。この事例では、超音波画像といった画像データに加え、年齢・性別・血液といったテキスト・数値データを統合してAIに学習させることで実現しています。

マルチモーダルAIの理解を深め活用していきましょう

マルチモーダルAIは、テキスト・画像・動画などの異なる種類の情報を統合して処理できるAIです。従来のシングルモーダルAIよりも、高度な理解や判断を可能とします。ビジネスでの活用も増えてきており、需要は今後さらに高まっていくと考えられます。
自社のビジネスに対して、どのようにマルチモーダルAIを取り入れられるか、検討してみてはいかがでしょうか。

当社の関連ソリューション/サービス

関連記事はこちら