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テクノロジー

AIの転移学習とは? メリット・デメリットや活用例など

転移学習とは、AIの精度を高める手法のひとつです。転移学習を行うことで、従来よりも効率的に機械学習のプロセスを進められるようになります。
この記事ではAIの転移学習の仕組みやメリット・デメリット、活用例などについて解説します。転移学習について理解し、AIの活用や学習モデルの開発に役立てたい方はぜひ参考にしてください。

  1. AIの転移学習とは
  2. 転移学習とファインチューニングの違い
  3. 転移学習と蒸留の違い
  4. 転移学習のメリット・デメリット
  5. 転移学習の用途

AIの転移学習とは

AIの転移学習とは、すでに学習が完成している既存のAIを用いて、機能が異なる別のAIを作成する手法です。具体的には、AIの学習モデルを構成するいくつかの層のうち、出力層と呼ばれる部分のみを削除した上で学習を行います。
例えば、画像内の物体がリンゴかどうか判別できるAIの学習モデルをもとに、みかんを判別するAIを作ることなどが可能です。

転移学習と「ファインチューニング」「蒸留」

転移学習と関連性の高い手法として、ファインチューニングや蒸留と呼ばれる手法が挙げられます。AIの学習を効率化するための手法であることが共通点です。ただし、学習モデルを構築する手順が異なります。各手法の具体的な違いは次のとおりです。

転移学習とファインチューニングの違い

ファインチューニングとは、もととなるAIの学習モデルの「重み」と呼ばれるパラメーターを調整して、新たな学習モデルを作ることを指します。既存の学習モデルを用いて、ゼロから学習を行うよりも効率的にAIの精度を高めることが可能です。

ファインチューニングでは重みの調整を行うことに対して、転移学習では出力層以外の学習モデルをそのままの状態で利用します。

転移学習と蒸留の違い

AIの蒸留とは、大規模な学習モデルをもとに、同様の機能を持ったより小さな学習モデルを開発する手法です。通常のAIの学習では、大量のサンプルデータを入力してモデルの構築が行われます。一方、蒸留ではサンプルデータに加えて、すでに完成している学習モデルが出力した結果も参考にすることが特徴です。

蒸留ではもととなる学習モデルによる出力結果を利用することに対して、転移学習はもとの学習モデル自体の一部を利用する点が異なります。

転移学習のメリット・デメリット

転移学習にはメリットだけでなくデメリットもあるため、両方を押さえた上で活用することが重要です。

メリット

転移学習のメリットとして、AIの学習にかかる時間を短縮できることが挙げられます。既存のモデルをもとに出力層の部分のみ学習を行えばよく、効率的な開発が可能です。また、学習に利用できるサンプルデータが少ない場合でも、精度の高い学習モデルを作成できます。応用範囲の広さも転移学習のメリットです。例えば、果物の種類を判別するAIをもとに転移学習を行い、動物や自動車などカテゴリーが異なる対象物を判別する学習モデルが作れます。

デメリット

転移学習のデメリットは、もととなる学習モデルによっては精度が下がってしまうリスクがあることです。新たに作成したいAIと関連性の低い学習モデルを使うと、精度が落ちる「負の転移」と呼ばれる現象が起こります。転移学習を行う場合、精度に問題がないか確認しながら開発を進めることが重要です。

転移学習の用途

転移学習は、さまざまな分野のAI開発に応用されています。主な用途は次のとおりです。

自然言語処理

文章の自動生成や機械翻訳などの自然言語処理では、転移学習によって開発を効率化できます。例えば、芸能関連のニュースを要約する既存のAIを用いて、政治関連やスポーツ関連のニュースを要約する学習モデルを作成することが可能です。また、英語の文章を日本語に翻訳するAIをもとに、フランス語の文章を日本語に翻訳する学習モデルを構築することなどもできます。

画像解析

画像解析における転移学習の活用例として、写真データの解析による不良品の検出などが挙げられます。例えば、ある製品Aのキズや変形を自動検出する学習モデルがすでに構築されていれば、転移学習により別の製品Bの不良品を見つけるAIを作ることが可能です。

音声認識

音声認識の分野でも、転移学習によるAI開発が行われています。日本語で話した内容を文字起こしできる学習モデルがあれば、声のトーンや話し方を問わず、高い精度で音声を認識できます。音声認識だけでなく、変換や合成などの音声生成も転移学習が活用できる分野です。

転移学習は、既存の学習モデルの一部を使うことで学習プロセスを効率化する手法です。学習にかかる時間を短縮できるだけでなく、学習対象となるサンプルデータの不足を補うこともできます。自然言語処理や画像解析、音声認識などさまざまな分野のAI開発に、転移学習を活用していきましょう。

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