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テクノロジー

Wi-Fi6とは? メリット・デメリットやほかのWi-Fi規格との違いなど

Wi-Fiは「Wi-Fi6」という規格が主流になってきました。最新規格の「Wi-Fi7」の策定も進められていますが、一般に普及するまでにはまだ時間が掛かるでしょう。そのため、まずはWi-Fi6について理解を深めることが重要です。Wi-Fi6とはどのような規格で、これまでのWi-Fiとは何が異なるのでしょうか。Wi-Fi6の概要と知っておくべきポイントについて説明します。

  1. Wi-Fi6とは
  2. Wi-Fiの呼称と正式名称
  3. Wi-Fi6の基本性能とほかのWi-Fi規格との違い
  4. Wi-Fi6の互換性
  5. Wi-Fi6の特長
  6. Wi-Fi6を利用するメリット
  7. Wi-Fi6に使われている技術
  8. Wi-Fi6と5Gの関係

Wi-Fi6とは

Wi-Fi6(ワイファイシックス)とは、無線LAN規格であるIEEE 802.11シリーズの普及促進や、「Wi-Fi」というブランド名の認証業務を担っている「Wi-Fi Alliance(アライアンス)」という業界団体によって命名された、第6世代のWi-Fiの呼称です。正式な規格名は「IEEE802.11ax」であり、2014年に策定された「IEEE802.11ac」に続く規格にあたります。
そもそも無線LANの規格は標準化団体である「IEEE(米国電気電子学会)」が策定しています。そしてIEEEが策定した規格に対応した機器を認定しているのが、Wi-Fi Allianceです。
これまで無線LAN規格の規格名は、ずっと「IEEE 802.11」の末尾にアルファベットを加える形で決められていました。Wi-Fi6も規格名については同じなのですが、一般になかなか浸透し難い「IEEE802.11ax」とは別に、認知度が上がってきたWi-Fiという名称を冠した新しい呼称が使用されることになりました。いわばWi-Fi6は、Wi-Fi AllianceによるWi-Fiの新しいブランド展開を推進するための名称といえます。

Wi-Fiの呼称と正式名称

Wi-Fiを冠した呼称と、IEEE 802.11の正式名称の関係について整理しておきましょう。Wi-Fi Allianceによって、Wi-Fi6だけではなくWi-Fi4とWi-Fi5という呼称を使用することも発表されています。Wi-Fiを冠した呼称については、それ以前のナンバーリングはありません。
また、2023年12月時点で公表されている最新情報をもとに、Wi-Fi7の情報も併わせて記載します。

世代 規格 策定時期 周波数帯 最大速度 新呼称
1 IEEE 802.11 1997年6月 2.4GHz帯 2Mbps -
2 IEEE 802.11a 1999年10月 5GHz帯 54Mbps -
2 IEEE 802.11b 1999年10月 2.4GHz帯 11Mbps -
3 IEEE 802.11g 2003年6月 2.4GHz帯 54Mbps -
3 IEEE 802.11j 2004年12月 5GHz帯 54Mbps -
4 IEEE 802.11n 2009年9月 2.4GHz/5GHz帯 600Mbps Wi-Fi4
5 IEEE 802.11ac 2014年1月 5GHz帯 6.9Gbps Wi-Fi5
6 IEEE 802.11ax 2020年頃 2.4GHz/5GHz帯 9.6Gbps Wi-Fi6
7 IEEE802.11be 2024年頃 2.4GHz/5GHz/6GHz帯 46Gbps Wi-Fi7

Wi-Fi6の基本性能とほかのWi-Fi規格との違い

Wi-Fi6の最大速度は9.6Gbpsと、Wi-Fi5の約1.4倍速くなっています。これだけ見ればさほど大幅な速度アップではないような印象ですが、実はWi-Fi6は従来のように最大速度を追求するのではなく、通信品質の向上に注力した規格となっています。ユーザーが体感できる実効速度とスループット(一定時間あたりのデータ転送能力)は、Wi-Fi5の4倍以上改善される可能性があります。ちなみに、Wi-Fi5の実効速度は800Mbps程度といわれています。
使用周波数は2.4GHzと5GHz帯の2つで、デュアルバンド同時接続に対応しています。また、Wi-Fi6の実効速度とスループット向上に大きく貢献するのが、周波数帯の利用効率を高める「MU-MIMO」(MultiUser-MIMO:Multiple Input Multiple Output)や、1チャネルの帯域を複数のユーザーに割り振って使用できるようにする「OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access」(直交周波数分割多重)といった機能です。これらによってこれまで以上に多数の端末を同時接続し、高速に通信することが可能となっています。

Wi-Fi6の互換性

Wi-Fi6の通信を実現するためには、ルーターやパソコン、スマートフォンなどのデバイスのすべてがWi-Fi6に対応している必要があります。いずれかのデバイスが対応していない場合、Wi-Fi6による通信は行えません。しかし、Wi-Fi6には下位互換性があるため、デバイスが対応していない場合はWi-Fi6の通信が行えずとも、Wi-Fi5やWi-Fi4の通信は可能です。
例えば、Wi-Fi6に対応したルーターを利用しており、スマートフォンがWi-Fi5までしか対応していない場合、ルーターはWi-Fi5の通信を行います。もちろん、その後スマートフォンなどをWi-Fi6に対応したものに買い替えれば、Wi-Fi6の通信が可能です。
ここで覚えておくべきことは、Wi-Fi6の通信を実現するためにはすべてのデバイスが対応している必要がありますが、下位互換性があるため通信ができなくなることはない、ということです。

Wi-Fi6の特長

Wi-Fi6の特長は、高速通信を同時接続して安定して実現できる点にあります。多数のユーザーが存在する高密度の環境でも、それぞれの平均スループットの低下を最小限に抑えることができます。多くのデバイスを一つのルーターに接続しても通信が不安定にならず、遅延も少ないということです。
「Wi-Fi=高速」と思われている現在でも、あまりに多くの端末をWi-Fiにつなげていると接続が遅く感じることがあるはずです。自宅やオフィスに最大速度1Gbps(やそれ以上)の光回線を引いていても、有線LANで接続していない限り、Wi-Fiがボトルネックとなって手元の端末で使用する場合の速度は落ちてしまうものです。
しかしWi-Fi6であれば、こうした問題が一挙に解決する可能性があります。PCやスマートフォン、ゲーム機などばかりでなく、多数のIoTデバイスが接続しているような状況にも対応できる環境が整います。工場、病院、大学、駅、空港、スタジアムなどでもWi-Fi6が活用されていくでしょう。
さらに、Wi-Fi6は省電力化という面でも優位性を持っています。これはOFDMAなどに消費電力を削減する効果があるためです。Wi-Fi6で接続する端末のバッテリー消費が抑えられるため、この点でもIoT端末との親和性の高さが期待できます。

Wi-Fi6を利用するメリット

Wi-Fi6を利用するメリットは、前述の3つの特徴のとおりです。

  1. 高速通信
  2. 混雑に強い
  3. 省電力化

Wi-Fi5の通信速度は約6.9Gbpsであるのに対し、Wi-Fi6は約9.6Gbpsと従来よりも約1.3倍光速な通信を実現できます。近年、インターネットコンテンツでは動画が当たり前に使われており、その品質も年々向上しています。加えて、オンラインゲームなどによる通信の大容量化に対応するためにも、Wi-Fi6の高速通信は欠かせないものとなるでしょう。

また、パソコンだけでなくスマートフォンやスマート家電、ゲーム機器などの多くのデバイスがインターネットに接続するようになった昨今、従来のWi-Fi規格では混雑による通信品質の低下が課題となっています。Wi-Fi6は一つの通信で複数へ同時に届くようになっており、混雑による通信品質の低下を防げます。

加えて、スマートフォンなどの子機側のバッテリー消費を抑える「スリープ状態」に移行する機能もメリットの一つです。子機側を利用していない場合は余計な通信を発生させず、バッテリーの消費を抑えて省電力化を実現できます。

Wi-Fi6に使われている技術

Wi-Fi6が持つ特徴を実現するための主な技術としては、次のような技術が挙げられます。それぞれ簡単に解説するため、一つずつ見ていきましょう。

OFDMA

OFDMAは、一つの通信で複数のデバイスを同時に接続するための技術です。OFDMAにより、Wi-Fi6は混雑に強い規格となっています。

MU-MIMO(Multiple Input Multiple Output)

MIMOは同一周波数帯で同一の通信を行うことで、周波数帯を増やさずに通信の高速化や通信距離を延長するための技術です。Wi-Fi6ではMU-MIMOとなり、MIMOが持つ接続デバイスの増加による通信品質の低下を改善し、OFDMAと併せてより混雑に強い通信を実現します。

1024-QAM

1024-QAMはデータ変調方式であり、Wi-Fi5では「256QAM」でした。Wi-Fi6で1024-QAMになったことで、一度により多くのデータが送れるようになり、通信の高速化に貢献しています。

BSS Coloring

BSS ColoringはWi-Fi機器同士の干渉を最小限にし、通信容量を増やす技術です。こちらも混雑に強いというWi-Fi6の特徴を実現するための技術の一つです。

TWT (Target Wake Time)

TWTはスマートフォンなどの子機側のバッテリー消費を抑える技術です。TWTを利用するためには、子機側も対応している必要がありますが、今後増えていくと予想されます。

Wi-Fi6と5Gの関係

Wi-Fi6の普及と時を同じくして、5G(第5世代移動通信システム)という次世代ネットワークも登場しました。通信速度の向上、同時接続の範囲拡大などの特徴は似ており、5G普及後にWi-Fi6は必要なのかといった議論もありましたが、現在は共存しています。
Wi-Fi6と5Gの大きな違いとしては、5Gは通信事業者が得た免許によって運用されており、Wi-Fi6は免許が不要という点です。そして現在のところ、5Gだけを利用して通信をするには、端末ごとの契約でコストがかさむといった心配があります。その点Wi-Fi6であれば、気軽に設置できる上、オフィスで端末数が増えても大きな負担にはならないといった面があります。
しかしWi-Fi6は、屋外、特に移動中での使用には向いていません。こういった双方の特徴にしたがって、お互い補完し合う形で共存を続けるだろうというのが現在の考え方としてはあります。
Wi-Fi6と5Gが普及すれば、いつでもどこでも高速通信が可能になります。そのことによるビジネスチャンスの広がりにも目を配っていくべきでしょう。
※Apple、iPhoneはApple Inc.の商標です。
※Wi-FiはWi-Fi Allianceの登録商標です。
※IEEEはThe Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.の商標です。

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