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従業員エンゲージメントと心理的安全性のために続けてきた、従業員との対話とは(後編)

# 組織活性化

はじめに

従業員エンゲージメントの向上と心理的安全性の確保に取り組むうえで、当社が従業員との対話を重視しているのは、なぜか。さらに対話を重視した施策として、どのようなものをおこなってきたか。

コロナ禍に突入する直前である2019年までの取り組みを、前編でご紹介しました。今回はテレワークが一気に進んだ2020年以降の“対話の施策”をご紹介します。

2020年春、半強制的に突然はじまったテレワークで、多くの従業員の心理的安全性が揺らぎました。心理的安全性の低下は、従業員エンゲージメントの低下にもつながります。次々と状況が変わるコロナ禍においては、スピード感のある対応が急務でした。

緊急事態に対応するための対話が必須

2020年4月に世の中が一斉にテレワークに切り替わったとき、環境整備が間に合わず混乱に陥った企業は少なくありませんでした。当社は2019年度から大半の環境整備を終えていたものの、やはり刻々と変わる状況に応じて、柔軟に即断できる体制を整える必要がありました。

ニューノーマル推進本部(2020年)

緊急対応のための対話の場として、情報システム部門とコーポレート部門の代表者が集まったバーチャル組織。部門間の対話を促し、会社として迅速な決断と行動を実現しました。

安否確認システム(2020年)

急激に罹患者数が増え続ける中、人事総務部門がもっとも心配していたのが、特に単身者の安否確認です。万一、ひとりで連絡が取れない状況に陥っていないか。そこで地震などの災害時に使用する安否確認システムを活用して、日々の勤務状況を上長へ報告する運用としました。

毎日のことなのでシンプルな入力フォームですが、人事総務部門にとっては従業員一人ひとりの健康を確認する非常に重要な対話の1つだと捉えています。

オンラインでも家族との対話と交流を欠かさない

毎年開催されていた日立ソリューションズグループのスポーツフェスティバルは、コロナ禍に中止になりました。それに代わるイベントとして、2021年3月に、当社が開催したのがオンラインイベントの「くりえいとんフェスティバル」です。対象者は、従業員とそのご家族。「オンライン会社訪問」と題して本社や拠点の紹介をしたり、オンライン競技会、川柳コンテストなど、ご家族と会社との対話の機会は、コロナ禍でも絶やしませんでした。

心理的安全性の確保のために。対話の場をつくる

ある程度の物理的環境やシステムなどが整うと、次に明らかになったのが心理的安全性の低下という課題でした。

自社開発の仮想オフィス(2022年)

在宅勤務中も出社していた頃と同じように、仲間がいるという安心感を得られて、従業員同士の対話も促す。2022年10月に搭載された新しい機能「執じぃ」は、全従業員が1つのテーマで対話するのを促す仕組み。心理的安全性の確保だけでなく、さらにポジティブな感情“わくわく”を生み出している。

懇親会の補助(2023年)

コロナが感染症5類に移行して会食などの制限もゆるくなったのを機に、リアルでの従業員同士の対話を促すための施策。一人あたり5,000円の補助金を支給。

2023年7月、“記名式”サーベイをはじめて実施

課題があれば従業員の声を集め、課題の本質を掴み、改善していく――。

課題解決の基本として慣れ親しんだサーベイでしたが、これまでの匿名式に代わり、2023年度はじめて記名式のサーベイに着手しました。

近年、個人情報保護の取り扱いの観点から、あらゆる調査が匿名式になりつつあります。これは日本だけではなく海外においても同様です。世界の流れに反して、あえて記名式を選んだのは、「人と組織の可視化」が目的です。

「従業員がイキイキと生産性意識を高く持ち、働けているか」という現状を可視化し、定量化することで、「個人が持つ多様な強み、さらに個々の能力を最大限に発揮する職場・会社」を実現するためです。

匿名式サーベイの場合、組織としての現状は可視化できますが、無記名のため回答者一人ひとりに対するフィードバックはできません。全体像は掴めても個別の課題対策にはつながりにくいのです。しかし、記名式であれば個人ごとに状態を可視化でき、個別のフォロー対応や面談などの精度をあげることも可能になります。特に今回は、自己認識による行動変容を起こす狙いで、一人ひとりに向けて、調査結果から強み・弱みの改善アドバイスを含む個人報告書を作成するという新たな試みがありました。

お互いのフィードバックで、さらに深い対話へ踏み込む

はじめての試みに際して、社長の南章一は全従業員にメッセージを送りました。

サーベイの目的などを伝えた後、「私は皆さんからのフィードバックを貴重なものととらえています。ぜひ、本サーベイに回答いただきますよう、よろしくお願いします」と南は言葉を結んでいます。

サーベイは会社に対する従業員のフィードバックであり、それを基に3,000人を超える全従業員一人ひとりに向けて会社もフィードバックをおこなう。名前をあかして答えるのは、回答者側にもある種の覚悟が必要ですが、会社も個人との真摯な直接対話をおこなう覚悟なのです。

従業員サーベイは、私たちにとって貴重な対話のひとつの型。従業員エンゲージメントの向上、心理的安全性の確保をさらに推し進めるなかで、より深い対話を求めて、さらなる進化のステージに踏み出しています。

おわりに

回答する側である当社の従業員は、社内サーベイをどのように捉えているのでしょうか。入社年度が2015年の合併前か後で少しニュアンスが異なります。

たとえば合併後に入社した従業員は社内サーベイをはじめ会社との対話に慣れているので「自分の想いを会社に伝える、公開するのはふつうのこと」と感じています。いろんな場面で、自分の意見をいうことにも聞かれることにも抵抗がないという傾向がみられるのです。

一方で、合併以前からの従業員の中には、「最初は会社に不信感があった」という声もあります。しかし合併から1年後、従業員の想いを会社に伝えるために有志が中心となり、労働組合が設立された頃から、気持ちに変化が訪れます。

「サーベイも多いし、従業員の声を聞く機会も多い。不信感があるときは、しつこいなと思っていました。けれど、それでもずっと続いているから、だんだん会社も本気なんだなと(笑)。私自身の会社への向き合い方も変ってきました。」

編集後記

サーベイ、仮想オフィス、懇親会などのリアルのコミュニケーション、手紙など、対話をするためのツールはさまざまです。

とにかく“対話”を基にして、従業員の声を徹底的に聞き、会社の課題を丁寧に解決していく。たとえ「しつこい」と思われても、耳を傾け続ける。

それにより会社の従業員を思う“本気”が伝わり、心理的安全性の確保を可能にし、そして従業員エンゲージメントを向上させていく。前編でご紹介した、当社の従業員幸福度が年々向上している理由は、ここにあるのではないでしょうか。

「従業員エンゲージメントと心理的安全性のために続けてきた、従業員との対話とは(前編)」はこちらからご覧下さい。

人事総務部門が歩んだ試行錯誤の8年間

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さらに従業員エンゲージメントにつながる働き方改革を実現した21の施策については、こちらからご覧下さい。

働き方改革を実現した、本気の施策21

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