経営戦略
ナレッジマネジメントとは? 目的やメリット・導入手順など
ナレッジマネジメントは組織の知識を効果的に活用し、競争力を高めるために重要な要素です。属人化しがちなノウハウや知識を組織全体で共有できれば、さまざまなメリットが得られるでしょう。しかし、ナレッジマネジメントの具体的な内容が分からない、という方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、ナレッジマネジメントの基礎知識からメリットや手法、導入手順を解説していきます。
ナレッジマネジメントの基礎知識
ナレッジマネジメントは組織の成長に欠かせない手法の一つです。ここでは、ナレッジマネジメントの基礎知識として、概要やその目的を解説します。
ナレッジマネジメントとは?
ナレッジマネジメントとは、組織内の知識やノウハウを「ナレッジ(知識・知見)」として捉え、共有・活用することで、組織としての競争力を高める経営管理手法です。個人の持つ知識やノウハウを組織全体で共有し、生産性の向上や新規事業開発につなげることをめざします。
ナレッジマネジメントの目的
ナレッジマネジメントの主な目的としては、次の3点が挙げられます。
- 組織の知識資産を最大限に活用する
- 業務効率と生産性を向上させる
- イノベーションを促進し、新たな価値を創造する
個人が持つ知識や知見、スキルには限界があります。しかし、組織として従業員それぞれが持つ知識などを共有できれば、これらの目的を達成できるでしょう。結果として、組織の競争力強化や持続的な成長が実現できるのです。
ナレッジマネジメントのメリット
ナレッジマネジメントを導入することで、組織にはさまざまなメリットがもたらされます。その代表的な3つのメリットについて、一つずつ見ていきましょう。
業務効率化・生産性向上
ナレッジの共有により、問題解決の迅速化が可能です。例えば、過去の成功事例や失敗事例を共有・参照することで、効率的な意思決定や業務遂行が実現できます。
人材育成効率の向上
組織内の知識やノウハウを体系化することで、新入社員の教育や技術の継承がスムーズになります。ベテラン社員の暗黙知を形式知化することで、効率的な人材育成が可能です。ナレッジとして蓄積することで、多くの従業員がツールとして参照するだけで学べるようになり、一人ひとりに教育を実施するよりも効果的に育成を行えます。
サービス品質の改善
顧客対応や製品開発に関するナレッジを蓄積・共有すれば、サービスの品質向上も期待できるでしょう。ナレッジを通して顧客対応や製品開発を行い、その結果をフィードバックしてナレッジを更新することで、顧客ニーズへの迅速な対応や、製品の改善・開発が効率的に行えます。
ナレッジマネジメントの手法
ナレッジマネジメントにはさまざまな手法があります。組織の特性や目的に応じて、適切な手法を選択することが重要です。
経営資本・戦略策定型
経営資本や戦略に関するナレッジを蓄積・活用する手法です。経営者や幹部の知見を組織全体で共有し、戦略立案や意思決定に活かします。
顧客知識共有型
顧客に関する情報やノウハウを共有する手法です。顧客ニーズの把握や効果的な営業活動に活かせます。
ベストプラクティス共有型
組織内の優れた実践例(ベストプラクティス)を共有する手法です。業務改善や効率化に効果を発揮します。
専門知ネット型
専門的な知識やスキルを持つ人材をネットワーク化する手法です。組織横断的な知識共有や問題解決に役立ちます。
ナレッジマネジメント導入の手順
ナレッジマネジメントを効果的に導入するためには、計画的なアプローチが必要です。導入の基本的な手順は次のとおりです。
- 導入目的の明確化
- 必要な情報の可視化と共有
- ナレッジ共有の仕組み構築
- 推進体制の確立
- 社内文化の醸成
- 継続的な改善
まずは、組織の課題や目標を明確にし、ナレッジマネジメントの導入目的を設定することが重要です。その目的を達成するために、組織内のナレッジを洗い出し、共有すべき情報を特定します。その後、ナレッジを効果的に共有・活用するための仕組みやシステムを整備し、ナレッジマネジメントを推進するチームや担当者を明確にして推進していきます。
ナレッジマネジメントの環境が整ったら、担当者だけでなく組織全体にナレッジ共有の重要性を浸透させましょう。ナレッジ共有を組織の文化として確立していきます。最後に、定期的に効果を測定し、必要に応じて改善を続けることも重要です。これらを実行し、自社にあったナレッジマネジメントを実現しましょう。
ナレッジマネジメントを始めましょう
ナレッジマネジメントは、組織の知識資産を最大限に活用し、競争力を高めるための有効な手段です。この記事で解説したナレッジマネジメントのメリットや手法、導入手順を参考にし、ぜひ自社のナレッジマネジメント導入を進めてみてはいかがでしょうか。
効果的なナレッジマネジメントの実現には、適切なツールの活用も欠かせません。日立ソリューションズ・クリエイトでは、企業内の人材交流と知識の流通を支援する「人材・スキルマッチングサービス」を提供しています。組織内の人材スキルを可視化することで、最適な人材活用を支援するソリューションです。社内交流の機会を増やしたい、知識・人材を共有して活用したい、と考えられている場合には、ぜひ一度お問い合わせください。
あわせて読みたい
関連記事はこちら
タレントマネジメントシステムとは? 機能やメリット・デメリットなど
タレントマネジメントは、人材を企業の重要な資産として捉え、戦略的に活用するものです。その実践を支援するものが、タレントマネジメントシステムです。タレントマネジメ...
詳細はこちら
タレントマネジメントとは? 目的や導入メリット・進め方など
人材戦略の重要性が高まるなか、「タレントマネジメント」という言葉をよく耳にするようになりました。しかし、その具体的な意味や導入メリットについて、十分に理解してい...
詳細はこちら
IT-BCPとは? 対策の手順や策定時の注意点など
現代のビジネス環境では、ITシステムは欠かせない存在となりました。そのようなITシステムが災害やサイバー攻撃などのインシデントによってダウンしてしまうと、企業活...
詳細はこちら
ESG経営とは? 意味やメリット・事例などを解説
SDGsは企業や個人を問わず、地球上で活動するすべての人々が意識するべき目標です。多くの人が平和で豊かに暮らせるようになるために、世界規模で取り組みが進められて...
詳細はこちら
BCP対策とは?企業が実施すべきことを詳しく解説
BCP(事業継続計画)対策は政府も促進の取り組みを続けており、多くの企業の課題といえるでしょう。BCPの策定がまだの企業は、そもそも策定するべきか、策定するには...
詳細はこちら
AI人材に必要なスキルや育成方法など
近年、さまざまな分野でAIの活用が進んでいます。ビジネスでAIを上手く活用すれば、業務の効率化や生産性の向上だけでなく、新たな事業の創出なども期待できるでしょう...
詳細はこちら
政府が推奨する「クラウド・バイ・デフォルト原則」とは?
「クラウド・バイ・デフォルト原則」という言葉を見聞きしたことはあるものの、どのような意味か分からないという方も多いのではないでしょうか。クラウド・バイ・デフォル...
詳細はこちら
ウェルビーイングとは? 企業が導入する方法と得られるメリット
ウェルビーイングとは、個人や企業、社会の在り方に関する言葉です。より良い生活や社会を実現するための考え方として、ウェルビーイングが注目されています。この記事では...
詳細はこちら
クラウド移行とは? メリットや移行すべきシステムについて解説
新型コロナウイルス感染拡大の影響によるテレワークの普及もあり、社内システムをクラウドへ移行する企業が増えました。しかし、社内システムのクラウド移行はさまざまなメ...
詳細はこちら
生産管理のQCDとは? 強化のポイントも解説
近年、製造業をはじめとして多くの企業は人手不足の課題を抱えており、業務の効率化や生産性の向上が求められています。その際に特に意識すべきものが生産管理のQCDです...
詳細はこちら
製造業における技術伝承の課題と解決策
多くの日本企業は人手不足の課題を抱えており、なかでも製造業はより深刻な状況だといわれています。製造業においては人手不足と併せて、技術伝承における課題もあります。...
詳細はこちら
DX人材育成のポイントとは? 社内で育てて人材不足を解決
DXを推進するにあたって多くの企業で障壁となっているのが、DXを担う人材が不足しているという問題です。DX人材は市場でも不足が続いているため、社内のリソースを活...
詳細はこちら
DX戦略とは? 取り組むメリットや進め方のポイントなど
製品・サービス、ビジネスモデル、業務や企業文化の変革を実現するために必要とされているのがDX戦略です。企業がDX戦略に取り組むメリットや進め方のポイントについて...
詳細はこちら
販売管理とは? 目的と業務の流れ、システム導入のメリットなど
販売管理とはそもそもどんな目的で、どのようなことを行うものなのでしょうか。自社の業務内容に当てはめて考えることで、販売管理をもっと効率的にできるかもしれません。...
詳細はこちら
休暇中に働く? ワーケーションの始め方とメリット・デメリット
会社から離れたリゾート地などで休暇を取りながら、必要に応じて仕事をする「ワーケーション」が注目されています。新しい休み方であり、働き方でもあるワーケーションは、...
詳細はこちら
SaaSとは? PaaS、IaaSとの違いについても解説
従来のパッケージソフトに対して、「SaaS」を導入して使用する企業の数が増えています。SaaSとは何か、同じクラウドサービスであるPaaSやIaaSとは何が違う...
詳細はこちら
SDGsとは? 17の国際目標と国内における企業の取り組み
メディアなどで「SDGs(持続可能な開発目標)」という言葉を目にする機会が増えています。SDGsとはそもそもどのようなものなのか、その概要や日本国内の取り組み状...
詳細はこちら
製造業が取り組むべき5Sとは? 活動の進め方やメリットなど
業務改善や職場の環境改善のための取り組みとして「5S」または「5S活動」というものがあります。とくに製造業は、この5Sへの取り組みが不可欠ともいわれています。5...
詳細はこちら
日本のハンコ文化が続く理由と脱却するために必要なこと
契約書などの文書をやりとりする際にハンコを押すという文化が、ここまで深く根付いているのは日本だけです。しかし最近、そのハンコ文化がテレワーク普及の足かせの一つに...
詳細はこちら
従業員満足度の重要性と調査方法、高め方とは
従業員満足度を向上させることに尽力する企業が増えています。なぜ今、従業員満足度を上げることが重要視されているのでしょうか。従業員満足度という考え方が企業にとって...
詳細はこちら
なぜ進まないのか? ペーパーレス化の課題
ペーパーレス化することの重要性は分かっていても、なかなかオフィス内の書類が減っていかない……と感じてはいないでしょうか。なぜペーパーレス化が進まないのか、課題を...
詳細はこちら
IT活用がカギ! ダイバーシティ経営の課題と解決方法
国も積極的にかかわって推進しているダイバーシティ経営のビジョンは、企業がめざすべき姿を示していると同時に、それを実現しようとしている企業に対していくつかの課題も...
詳細はこちら
マルチクラウドやハイブリッドクラウドは何ができるのか
マルチクラウドとハイブリッドクラウドは、いずれも現在、企業におけるクラウドサービスの運用方式の主流となりつつあります。両者はどのように異なり、それぞれ何ができる...
詳細はこちら
メリット・デメリットや導入効果を紹介! クラウドサービスの基礎知識
情報システムといえばオンプレミスが当たり前だった時代は過ぎ、現在、クラウドサービスを利用する企業が急増しています。クラウドサービスを導入し活用することでさまざま...
詳細はこちら
残業を減らして生産性向上! 長時間労働を改善する方法
残業を減らすこと、長時間労働を改善することは日本の企業にとって今、とても重要な課題となっています。2019年4月から働き方改革関連法も施行された中で、どのように...
詳細はこちら
e-文書法とは? 電子帳簿保存法との違いや押さえておくべきポイント
e-文書法、さらには電子帳簿保存法によって、企業が扱う保存すべき文書の多くを電子化して保存できるようになっています。しかし、e-文書法は2005年に施行された法...
詳細はこちら
健康経営とは? メリットや取り組みのポイントを紹介
従業員の健康管理は今や企業にとって重要な経営課題です。ブラック企業や労働者のメンタルヘルスが大きな社会問題となっている中、注目されているのが「健康経営」という考...
詳細はこちら
ブラック企業の特徴とは? ホワイト企業との違いを解説
多くの人を次々と採用し、長時間労働を強いて、ときにはパワハラやモラハラを用いながら労働者を酷使する「ブラック企業」。2013年には新語・流行語大賞も受賞したその...
詳細はこちら
企業が社員の健康管理を行うべき理由とは
長時間労働などの悪習慣がなかなか改善されず、うつなどのメンタルヘルス不調の増加も問題視される昨今、社員をはじめとするすべての従業員の健康は、個人のためのみならず...
詳細はこちら
就活生の企業選びのポイントはどのように変化しているのか?
就活生が自身の就職先を選ぶとき、企業のどこに着目し、どのようなポイントをとくに重要と考えているのでしょうか。時代とともに変わるその傾向を知れば、人材確保はもちろ...
詳細はこちら
法的責任も! 企業に求められる災害対策
震災をはじめ、風水害などに見舞われた際、企業には2つの災害対策が求められます。一つは従業員や顧客の安全確保であり、もう一つは重要業務の継続です。そのために平常時...
詳細はこちら