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テレワークの課題と解決策とは? 企業の成功事例も紹介

新型コロナウイルス感染症の影響もあり、テレワークを導入する企業が増加しました。そして導入が進んだことで、さまざまな課題も生じています。どのような課題と解決法があるのか、成功事例も含めてご紹介します。

  1. テレワークを導入する企業は増えている?
  2. テレワークに伴う企業の課題
  3. テレワークの課題に対する解決策
  4. テレワーク導入の成功事例

テレワークを導入する企業は増えている?

テレワーク導入が進むきっかけを作ったのは、2019年の働き方改革関連法の施行だといえるでしょう。そして、2020年に新型コロナウイルス感染症が拡大。その影響によってテレワークの事業継続性という側面が改めて見直されることに。多くの企業が在宅勤務を取り入れ、テレワークという言葉が広く知られるようになりました。
実際に、総務省「令和4年通信利用動向調査」によれば、テレワークを導入している企業の割合は51.7%と半数を超えています。導入目的としては「新型コロナウイルス感染症への対応(感染防止や事業継続)のため」が87.4%と最も高い結果となりました。新型コロナウイルス感染症が落ち着いてきても、テレワークによる業務の効率化などのメリットを体感したことで、利用を続ける企業も少なくないようです。テレワークは多様な働き方を実現するための手段の一つであり、従来のオフィスワークと組み合わせることで最適な働き方を労働者自らが選択できるようになります。
しかし一方で、テレワークに関するさまざまな課題も浮き彫りになってきました。

テレワークに伴う企業の課題

テレワークの導入・運用に伴い、企業が向き合うことになった課題を見ていきましょう。

勤怠管理に関する課題

最初のハードルになりやすいのが、社員の就労の実態をどうやって把握するのかという点です。テレワークは、いつ仕事を始めていつ終えたのかの把握が困難です。また勤務態度や進捗状況も分かりづらく、人事評価をどうするのかという問題も出てきます。
勤怠管理はメール・電話で上司に連絡を入れる方式、Excelに社員自身が勤務時間や仕事内容を記入する方式などが実施されましたが、手間がかかるうえ、管理も面倒です。

情報共有やコミュニケーションに関する課題

コミュニケーションや情報共有の方法も課題です。メールや電話、FAXだけでは明らかに限界があります。

コミュニケーション・情報共有はWeb会議システム、チャットツールの活用が広がりました。しかし、一方で雑談など気楽なコミュニケーションの重要さが再認識されています。

紙ベースの資料・書類に関する課題

紙書類の申請や確認、押印のために出社するケースが頻発することも話題になりました。業種や仕事内容によっては紙書類を利用せざるを得ない場合も多く、情報漏えいなどのリスクを考慮してデジタル化することが難しい、というケースもあります。改善するためには業務全体の見直しが必要になるため、これらもテレワークを機に課題が表面化した例の一つです。

セキュリティに関する課題

情報漏えいなどセキュリティ面の不安も見過ごせません。PCなどの端末とデータの扱い、インターネット回線の安全を一元管理するのが難しくなるためです。

セキュリティはテレワークに特化した社内ルールの策定、セキュリティリテラシーの向上が問われるようになっています。内部不正やサイバー攻撃に対するリスク管理も課題です。

進捗や勤務態度の確認に関する課題

勤務態度・進捗状況の把握は、カメラによる常時モニタリング、画面上の着席・退席ボタンを押すようなPC監視ツールを導入した企業もあります。しかし、休憩時間なども含め常に監視しているといった行き過ぎた管理はプライバシー侵害やパワハラ行為につながるとの指摘もされています。

さらに根本的な点として、テレワークを長期継続させる場合、既存のオフィス業務に慣れた社員一人ひとりの意識をどのように変えていくのかも問題視されるようになりました。テレワークを浸透・定着させる必要性が強調され、その方法が問われるようになっています。

人事評価制度に関する課題

テレワークでは従業員が働く様子を直接見ることができません。成果だけでなく、成果に至るまでのプロセスを評価に反映することもありますが、その場合には人事評価が難しくなります。そのため、成果主義の評価制度を導入するべきか悩む企業も多いでしょう。
どちらの場合も人事評価の制度を新しくする必要がありますが、簡単ではありません。また、同じ社内でも所属する部署や個人の都合などによって「フルリモート型」とオフィスワークとテレワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」などが混在するケースもあるでしょう。そのような従業員ごとの働き方の違いを、どのように評価基準に当てはめるのかが課題となります。

テレワークの課題に対する解決策

上記のような課題に対する解決策は、少しずつ確立されてきています。項目別に見てみましょう。

テレワークの勤怠管理

勤務時間の把握は勤怠管理ツールを活用するのが最もスマートな解決方法でしょう。業務の工数や進捗状況が把握できる、位置情報が記録できる、給与システムと連携できるといった機能も装備されるようになり、用途に応じた選択が可能です。

テレワークの情報共有とコミュニケーション

Web会議システムやチャットツールの使い方には工夫が必要です。自社の業務内容や企業文化に適合する方法を模索しながら改善を続ける企業が増えています。Web会議による朝礼の実施、チームや案件ごとのチャットルームの活用、社内SNS、電子会議室、電子掲示板など複数ツールの使い分けによって、コミュニケーションや情報共有の幅を広げることが可能です。

テレワークに対応するためのペーパーレス化

テレワークでは、申請書や稟議書などの社内承認プロセスはワークフローツールを活用するのが主流になっています。紙の書類やハンコ文化からの脱却も進みつつあります。
ペーパーレス化が進めば、いつでもどこでも書類を確認・作成することが可能です。また、印刷する必要がなくなるため、プリンターのリース代や紙・インクなどの消耗品代のコスト削減も実現できます。さらに環境負荷の削減にもつながるでしょう。これらのメリットが大きいことから、業務全体のペーパーレス化が積極的に進められています。

テレワークのセキュリティ

社内でテレワークのためのルールを策定して共有する他、テレワーク向けのセキュリティソリューションの活用を進める企業が増えています。セキュリティソリューションでは、テレワーク環境から基幹システムの設定を変更するなど、管理者が作業を行う際のクロスチェック、内部不正や許可していないアプリケーションのインストールを防ぐための操作監視、サイバー攻撃対策などの機能を利用できます。

テレワーク環境における従業員の意識改革

社員の意識を変えるにはトップダウン方式でのテレワークの推進や、大胆な制度改革が必要となります。社員への在宅勤務手当や補助金の支給などを行う企業も出てきています。

テレワークにおける人事評価

人事評価は評価項目の明確化と共有を進め、成果主義を基本とした目標管理制度(MBO:Management By Objectives)を導入することが解決策の一つになるでしょう。成果主義を徹底しすぎると、数値化できない業務に対する不公平感が生じるおそれもあるため、業務プロセスの可視化による新しい評価の仕組み作りも求められます。

テレワーク導入の成功事例

最後に、テレワーク導入に成功している事例をご紹介します。企業がどのようにテレワークの課題を解決しているのか、見ていきましょう。

製造業のテレワーク成功事例

男性向けコスメブランドを展開するA社は、2020年秋からテレワークを推進するために、在宅勤務対象者を拡大し、テレワークの回数制限を廃止、在宅勤務手当支給などの取り込みを実施しました。
他にもフレックスタイム制のコアタイムを撤廃、通勤手当を実費で支給するなどの制度改革を実践。テレワークにはなじみにくいと言われる製造業ですが、「できるところから始める」やり方で社員のテレワーク活用を全面支援しています。

建設業のテレワーク成功事例

社員40名ほどの電気工事会社であるB社は、建設現場に設置する現場事務所をサテライトオフィス化することでテレワークを推進しています。コミュニケーションや情報共有はWeb会議システム、チャットツール、社内Wikiツールを活用。
事務作業のみの日は在宅勤務もできる制度を作り、現場でも自宅でも設計図や指示書、工事報告書の作成が可能な環境を整えています。「現場のある仕事」でも、工夫次第でテレワークが導入できるという事例です。

総合ITベンダーのテレワーク成功事例

2017年からテレワーク制度を導入しているC社は、コロナ禍によりテレワーク実施率が増加し、緊急事態宣言後は全社員の9割にまで拡大しました。
国内グループの従業員は原則テレワーク、オフィス全席フリーアドレス化、2020年から3年でオフィス面積を半減という方針を打ち出しています。通勤定期券は廃止し、在宅勤務のための環境整備費用補助金を月額5,000円支給。最適な働き方を社員が選んで使い分けられる環境作りを強力に推し進めています。

テレワークは感染症対策のためではなく、多様な働き方を実現させる施策として定着してきています。テレワークの課題に向き合い、導入と運用を進めていきましょう。

テレワークの導入には多くのメリットが存在しますが、デメリットも存在します。導入する際には双方をしっかりと理解しておくことが重要であるため、こちらの記事も併せてご覧ください。

※Excelは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。

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