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5Gの商用化から普及に向けての課題

日本では2020年に商用サービス開始予定の5G。しかし、商用化から普及に向けてはいくつかの課題があるといわれています。誰もが5Gを利用する時代は果たして本当にやってくるのでしょうか。5G普及に向けた課題について解説します。

  1. モバイル通信技術の歴史
  2. 5G普及に向けての課題
  3. 日本は5Gで他国に遅れているのか

モバイル通信技術の歴史

5GのGは「Generation(世代)」を表します。5Gは第5世代移動通信システムのことです。数字が大きいほど世代が進み、ネットワーク通信の高速化と安定化が行われてきた証しです。

第1世代通信システムである1Gはアナログ携帯電話の時代で、通話は都市圏に限られていました。1979年に始まった「自動車電話サービス」の回線として利用されたのが最初です。その後、1985年には自動車電話の発展した重量約3kgの肩掛け式電話「ショルダーフォン」が発売されました。

デジタル無線による携帯電話システムである2Gが登場したのは1993年です。NTTドコモが1999年にiモードのサービス提供を開始し、メール、写メール、モバイル専用サイトなどが利用されるようになりました。

日本では2001年に運用がスタートした3Gは国際電気通信連合 (ITU) が定める「IMT-2000」 規格に準拠した通信システムでした。海外でも同じ携帯電話が使えるようになり、パソコンと同じインターネット上のWebサイトを閲覧できるようになりました。

4Gが登場する直前には「IMT-2000」を高度化した「LTE」が登場し、3.9Gと呼ばれました。LTEは4G向けの新技術を先取りした高速化技術で、現在では4Gと呼称してもよいことになります。

4Gの運用開始は2012年で、スマートフォンを使って高画質な動画も視聴できるようになりました。複数周波数帯の電波を束ねて通信することでより高速なデータ通信を実現する技術「キャリアアグリゲーション(CA)」も導入されるようになり、さらなる高速通信が可能になりました。

そして2020年には5Gが運用開始となる予定です。5Gの最終的な性能は、現行4Gの約10倍以上の10〜20Gbps以上という超高速、現行4Gの10倍の100万台/平方kmの多数同時接続、現行4Gの10分の1の1ミリ秒程度の超低遅延を実現するとされています。

ただし、5Gは3Gが4Gに一気に切り替わったときよりも緩やかに普及していくだろうと予測されています。

5G普及に向けての課題

5Gの普及が急速に進まないと見られている理由の一つは、5Gのスペックを必要とするだけのコンシューマー向けサービスやコンテンツがまだ少ないためです。現在のところ、スマートフォンで動画視聴やゲーム、SNSを楽しむ程度であれば4GやWi-Fi接続だけでほとんどストレスなく利用できています。

5Gが普及すれば4Kや8Kによる動画サービス、「VR(仮想現実)」や「AR(拡張現実)」を利用したライブ映像コンテンツなどが楽しめるようになるとアナウンスされていますが、はたしてそれらに対するニーズがどれだけあるのかは未知数です。スマートフォンで利用できる5Gならではと呼べるようなキラーコンテンツの登場が待たれているというのが現状でしょう。

同時に、大量の端末の同時接続に対応できるような全国的な基地局網の整備も課題とされています。5Gは4Gに比べて電波が届く距離が短く、その分、多くの基地局が必要となります。この問題を解決するには、通常の基地局を補完する小出力でカバー範囲の狭い「スモールセル(小型基地局)」の設置や、成層圏を飛行し続ける無人飛行機を基地局化する「成層圏通信プラットフォーム」の活用が有効と考えられています。

また、5Gを利用できるスマートフォンやWi-Fiルーターなどの対応端末の普及も課題です。5G対応のスマートフォンはすでに数社から発売されています(2019年9月現在)。まだ5Gが商用化されていない段階で5G対応端末だけが先行して発売された中国では、その端末が一時売り切れになるほどの人気を得たとの報道もありました。

しかし一方で、世界のスマートフォン販売台数全体のうち、5G対応端末が占める割合は2020年を迎えても数%程度にとどまるのではないかという予測もされています。

もっとも5G時代に大きな恩恵を受けるのはスマートフォンやウェアラブル端末などではなく、IoTや自動運転車だという見方もあります。IoTについては、当面は工場や研究所内などの閉じたエリアで使用する「ローカル5G」が構築される可能性もあります。5Gが家庭に浸透していくのは、スマートフォンよりIoT家電の方が早くなるかもしれません。

日本は5Gで他国に遅れているのか

5Gは米国のベライゾンワイヤレスという携帯電話事業者が2018年10月1日から、世界に先駆けて商用サービスを開始しています。2019年に入ると米国の主要な通信事業者の他、韓国、イギリス、オーストラリアで一般向けサービスがスタート。中国も同年内にサービス開始と伝えられています。

日本では2019年9月、ラグビーワールドカップ観戦イベントとして5G回線を使ったパブリックビューイングのプレサービスがNTTドコモにより実施されました。こうしたプレサービスや実証実験は他のキャリアも実施しています。一般向けの商用サービスは2020年の春から始まる見通しです。

日本の5Gは他国に比べて遅れているという声も聞こえていますが、上述したように5Gの利用を前提とした身近なサービスやコンテンツはまだほとんどないのが現状です。他国の5Gにしても利用できる地域は限定的で、速度も1Gbps程度であり、本来の性能に達しているとはいえません。

日本の5Gは他国の状況も見定めながら準備が進められています。必ずしも遅れているというわけではなく、「緩やかな普及」を前提に、着実な普及をめざした開発や投資が行われているといっていいでしょう。NTTドコモは2020年度第1四半期までに47都道府県に5Gのエリアを展開、その1年後には1万局の基地局の構築をめざすと発表しています。

5G普及の初期段階にはまず、4Gネットワークと連携して動作する「ノンスタンドアローン(NSA)形式」によるネットワークが構築されます。その後、5Gの性能をフルに発揮する「スタンドアローン(SA)」へと移行していきますが、全国である程度、5Gが利用されるようになる時期は2020年代の半ば頃だろうとする見方が一般的です。

5Gは緩やかに普及が進むと見込まれています。多くの企業が5Gを生かした魅力的なコンテンツやサービスを展開することが普及の一助となるでしょう。

※「NTTドコモ」は、日本電信電話株式会社の商標または登録商標です。
※「iモード」は株式会社NTTドコモの商標または登録商標です。
※「写メール」はソフトバンク株式会社の商標または登録商標です。

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