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レガシーマイグレーションとは? 手法や企業における必要性について解説

業務でITシステムを利用するようになって久しい昨今ですが、なかには昔から存在する古いシステムを利用している場合もあるでしょう。「遺産」ともいえる古いシステムは、徐々に新しいシステムへと移行しており、「レガシーマイグレーション」は多くの企業において必要とされています。
この記事では、レガシーマイグレーションの概要から必要性やメリット・デメリット、手法の違いについて解説します。

  1. レガシーマイグレーションとは
  2. 企業におけるレガシーマイグレーションの必要性
  3. レガシーマイグレーションのメリット・デメリット
  4. レガシーマイグレーションの手法
  5. レガシーマイグレーションを進める手順

レガシーマイグレーションとは

レガシーマイグレーションとは、遺産ともいえる古いシステム(レガシーシステム)を新しいシステムへと移行(マイグレーション)することです。日本の企業の中には、数十年前に構築された古いシステムを現在も使い続けているケースも珍しくありません。

しかし、レガシーシステムを使い続けているとさまざまな問題が発生するため、レガシーマイグレーションが必要とされています。
レガシーシステムについてはこちらの記事も併せてご覧ください。
レガシーシステムとは? 問題点や解決策をわかりやすく解説

マイグレーションとは

マイグレーションとは、英語で移行・移住・移動を指す言葉で、IT用語としてはシステムやデータなどを新しい環境へ移行することを表します。レガシーマイグレーションはマイグレーションの一種であり、その他にも移行対象や移行方法によっていくつか種類が存在します。
マイグレーションについてはこちらの記事も併せてご覧ください。
マイグレーションとは? 種類や実施する際の注意点について解説

企業におけるレガシーマイグレーションの必要性

日本では経済産業省が2018年に「DXレポート」を公開し、DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が認識され始めました。DXはAIやビッグデータなどの技術を用いて、新たなビジネスモデルの創出やレガシーシステムからの脱却などを目的とするものです。

「DXレポート」の中では、今後日本がDXを推進しなければ2025年以降に毎年最大12兆円ずつの経済損失が生じる可能性があると記されています。これは「2025年の崖」と呼ばれ、レガシーシステムが負の遺産となり、もたらされるものです。

このことから、レガシーマイグレーションは一企業としてだけでなく、日本全体で取り組むべき課題となっています。

レガシーマイグレーションを深く理解するためにも、デジタルトランスフォーメーションについて理解することは欠かせません。デジタルトランスフォーメーションの基礎知識と併せて、導入における課題や成功事例を知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは? 概要や企業の課題について解説

加えて、経済産業省が指摘した「2025年の崖」については、こちらの記事で詳しく解説しています。こちらの記事のなかでは、2025年の崖の概要に加え、影響を受ける企業・克服する方法も解説していますので、併せてご覧ください。
経済産業省の「2025年の崖」について分かりやすく解説

レガシーマイグレーションのメリット・デメリット

レガシーマイグレーションにはさまざまなメリットがありますが、同時に知っておくべきデメリットも存在します。それぞれについてしっかりと理解した上で進める必要があるため、一つずつ見ていきましょう。

メリット

レガシーシステムは長い期間運用されており、場合によってはツギハギだらけのシステムとなっている場合があります。その場合にはシステムが複雑化し、運用・保守の費用だけでも高額なコストが発生します。

レガシーマイグレーションによってシステムを一新する際に、運用・保守のコストの最適化が可能です。また、新たな技術を活用することで競争上の優位を確保し、企業価値を高めることも期待できるでしょう。

デメリットや注意点

レガシーマイグレーションを行うためには、レガシーシステムへの理解が欠かせません。古くから運用され続けているシステムの全体像について理解している人材は、そう多くないでしょう。そのため、第一に人材の確保が課題となります。

複雑化したレガシーシステムを、業務に影響を及ぼさないようにレガシーマイグレーションするためには、入念な調査と移行計画が必要であり、こちらにも人員が必要になるだけでなく、時間やコストも多くかかります。

それでも、前述の2025年の崖があるように、レガシーシステムを放置することはできません。これらのデメリット・注意点を考慮した上で、レガシーマイグレーションを実施する必要があります。

レガシーマイグレーションの手法

レガシーマイグレーションの手法としては、主に次の3つの手法が挙げられます。システムの種類や環境によって取るべき手法は異なるため、それぞれの違いについて理解しておきましょう。

リホスト

リホストは、システム(プログラム)を変更せずに再コンパイルなどで新しい環境に対応させる方法です。手間もコストもあまり掛かりませんが、レガシーシステムの影響が最も強く残ります。そのため、拡張性が低く新しい技術への対応も難しい手法です。

リライト

リライトは、システムの仕様・設計をもとにプログラムを書き直す手法です。例えば、古いプログラミング言語であるCOBOLなどで作られたプログラムを、C#(この表記でわかる?)などの比較的新しい言語で書き直すことが該当します。リホストよりも拡張性・新しい技術への対応は容易ですが、次に紹介するリビルドほどではなく、ちょうど中間に位置する手法です。

リビルド

リビルドは「リエンジニアリング」とも呼ばれ、仕様・設計から見直して全体的に構築し直す手法です。3つの手法の中で最も拡張性が高く、新しい技術への対応も可能ですが、その分、長期間の開発期間とコストが必要です。

古いシステムであるレガシーシステムから脱却し、新しいシステムへと移行するレガシーマイグレーションは、DX推進や2025年の崖対策として必要とされています。レガシーマイグレーションを実施するためには、レガシーシステムへの深い理解が必要であり、人材の確保や開発期間・コストの問題など、さまざまな課題が挙げられます。しかし、レガシーシステムを使い続けることはできず、これらの課題を理解した上でレガシーマイグレーションの実施は必要です。

レガシーマイグレーションを進める手順

ここでは、レガシーマイグレーションを進める手順を簡潔に解説します。全体的な流れや気をつけるべきポイントに注目して一つずつ見ていきましょう。

必要な人材を確保する

レガシーマイグレーションを進める際には、レガシーなシステムを理解している人材、システムのモダナイズに精通した人材を確保することが重要です。レガシーマイグレーションによって既存システムの機能がそのまま利用できることはもちろん、より使いやすく最適化されたシステムへと移行する必要があるからです。そのためにも、レガシーシステム、システムのモダナイズに精通した人材の確保は欠かせません。

スケジュールを決め計画的に進める

レガシーマイグレーションの対象となるシステムは、業務において基幹的な役割りを担っているものが多いでしょう。移行に際して、システムが利用できなくなる期間はできる限り少なくするべきです。そのため、システム全体の移行、データの移行など、しっかりと事前にスケジューリングして計画的に進める必要があります。

システムを見直す

レガシーマイグレーションは単に新しい環境にシステムを移すだけでは不十分です。現行システムにおける不満点や改善点を洗い出し、移行に伴って改善することで、よりレガシーマイグレーションの効果が高まります。既存の機能を残しつつ、より便利・効率的に業務が行える環境が整えられるように、システムの見直しもしっかりと行いましょう。

レガシーマイグレーションの手法を決める

システムを見直す際には、引き継ぐべき機能、不要な機能、新たに搭載すべき機能などのように整理し、レガシーマイグレーションにおける目的を明確にすることが重要です。目的が明確になれば、自ずと最適な手法も選択できるようになるでしょう。レガシーマイグレーションの代表的な手法である「リホスト」「リライト」「リビルド」のメリットとデメリットを考慮した上で、目的に合わせて手法を決めます。

日立ソリューションズ・クリエイトでは、レガシーマイグレーションを支援するソリューションを提供しています。豊富なノウハウからワンストップでマイグレーションを実現できるため、レガシーシステムの移行にお悩みの場合には、ぜひ一度お問い合わせください。
レガシーマイグレーション」の詳しい説明やお問い合わせはこちらから
レガシーマイグレーション

※本記事は、2023年5月25日に公開した内容を更新し、公開しています。

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