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基幹システム

モダナイゼーションとは? レガシーシステムからの脱却

レガシーシステムとも呼ばれる古いコンピューターシステムを現代的なシステムへと刷新するのが「モダナイゼーション」です。企業にとってモダナイゼーションはなぜ必要なのでしょうか。実施する際の注意点やその手法などとあわせて紹介します。

  1. モダナイゼーションとは
  2. モダナイゼーションの重要性
  3. モダナイゼーションの注意点
  4. モダナイゼーションの手法

モダナイゼーションとは

モダナイゼーションとは、構築され、稼働し始めて数十年を経過した古いコンピューターシステムを、過去の資産を活かしながら最新の技術に適合した現代的なシステムへと置き換えることを指します。

対象となる古いコンピューターシステムとは、主に1980年代に導入されたメインフレーム(大型汎用機)、あるいはオフコンを使った基幹システムなどが該当します。独自OSが搭載され、アプリケーションソフトウェアにはCOBOLなどのコンピュータ言語が使われ、その会社の業務に合わせてスクラッチ開発されたものがほとんどです。またその後1990年代後半頃から導入されるようになったオープン系システムが対象になることもあります。

モダナイゼーション(Modernization)は動詞の「モダナイズ(Modernize)」からきており、近代化や現代化を意味する英語の名詞です。コンピューターシステムを刷新する場合はITモダナイゼーション、システムモダナイゼーションなどとも呼ばれます。また、日本語では「モダナイゼーションする」というような使われ方もしますが、同様の意味で「モダナイズする」というような使われ方もします。

レガシーシステムとは

レガシーシステムとは、過去の技術や仕組みで構築されている古いシステムを表す言葉です。レガシー(遺産)といわれるとおり、時代遅れのシステムと捉えることもできるでしょう。レガシーシステムを利用し続けることにはさまざまなデメリットがあるため、レガシーモダナイゼーションやレガシーマイグレーションによって脱却する必要があります。

レガシーシステムについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を併せてご覧ください。

モダナイゼーションとレガシーマイグレーションの違い

レガシーシステムからの脱却方法としては、レガシーモダナイゼーションとレガシーマイグレーションの2つの対策が考えられます。レガシーモダナイゼーションは「“遺産”の“近代化”」を表し、「既存システムを活用しながら刷新する」方法です。対して、レガシーマイグレーションは「“遺産”の“移行”」を表し、「既存システムを完全に置き換える」方法となっています。

両者の違いは、既存システムを引き継ぐか完全に置き換えるかの違いです。レガシーモダナイゼーションの場合は「ユーザーの使用感が変わりづらい」というメリットがあり、レガシーマイグレーションの場合は「最新の技術によって最適化され、より効率的な業務が実現できる」といったようなメリットが挙げられます。どちらもメリット・デメリットが存在するため、自社にとってどちらの対策が有効であるかは、レガシーシステムの特性や状態などを事前に確認し、しっかりと検討することが必要です。

レガシーマイグレーションについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を併せてご覧ください。

モダナイゼーションの重要性

モダナイゼーションがクローズアップされるようになった背景には、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する上で、古い業務システム=レガシーシステムの存在が足かせになる可能性が周知されたことがあります。

2018年秋に経済産業省が発表した「DXレポート」には、老朽化し、ブラックボックス化したレガシーシステムを運用し続けることを大きな要因とするリスクが、「2025年の崖」という言葉で指摘されています。2025年までに古いシステムについて理解している人材の引退やサポート終了が予測され、レガシーシステムの運用に費やされるコストや人的リソースが増大し続けるため、企業が国際的な競争力を失う恐れがあるとするものです。またセキュリティ上の問題もあります。
なお、サポート終了に関しては、多くの企業で利用されているERPの「SAP」の標準保守期限切れがレポート発表当時は2025年とされていましたが、2027年に延長されたことで「SAPの2027年問題」として別途存在しています。

モダナイゼーションは「2025年の崖」をはじめとするリスクの回避と、現代的なビジネスのニーズに合致した仕組みへの転換という、守りと攻めの両面から必要な投資と捉えられます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、単にITシステムの導入・刷新だけで実現できるものではありません。モダナイゼーションをより深く理解するためにも、DXについての理解も深めることをおすすめします。DXについては、こちらの記事で詳しく解説しているため、併せてご覧ください。

モダナイゼーションの注意点

モダナイゼーションを実施するときは、現行システムの利用状況を分析して、どの部分を残し、何を刷新するのかを明確化する必要があります。要件定義の段階で現行システムの機能などを、(1)変えない(変えられない)部分、(2)変えられる部分、(3)変えなければならない部分、の3つのタイプに分けることが求められます。

このうち(2)の変えられる部分については、現行システムの刷新後も業務継続性の確保を重視するのか、それとも刷新したシステムに合わせて業務内容や手順の変革も視野に入れるのかで対応が変わってくるでしょう。

古いコンピューターシステムの環境では、ほとんどが業務に合わせて(多くの場合、後から)さまざまなカスタマイズを加えられています。そのため現場の声としては、「これまで通りの機能や仕様を同じように利用できないと困る」といったものが多くなるかもしれません。しかし、個別案件に対応するための独自の仕様にこだわると、すべてを移行するための手間とコストが膨大になり、さらに時代遅れの業務のやり方がそのまま残ってしまう可能性があります。

DXのためにモダナイゼーションを行うのであれば、刷新後のシステムは最新システムとシームレスにデータ連携ができるなど、いまの時代に即したものに変化させることも考えなければならないでしょう。そのためには業務プロセスを変える部分も出てくるでしょう。モダナイゼーションは業務改善、業務改革とあわせて実施するのが基本となります。

その点を事前に現場のスタッフともコミュニケーションを重ねて確認し、要件定義にしっかりと組み込んで計画的に進めていくことが重要です。

モダナイゼーションの手法

モダナイゼーションには主に次の5つの手法があります。それぞれの特徴を理解した上で、どれを選ぶかを決めます。

リプレイス

現行システムが担っている業務の目的を洗い出し、その目的を実現するための新しいシステムを構築して、ソフトウェア、ハードウェアともに刷新する方法です。簡単な導入方法としては標準化されたパッケージを利用することがあげられます。システム全体を再構築するため、個別案件にすべて対応することは難しい面がありますが、新しいビジネスモデルへの対応、業務プロセスの改革といった目的には合致させやすくなります。モダナイゼーションをDX推進につなげるにはとても適した方法といえます。

リホスト

メインフレーム上で稼働していたソフトウェアのプログラムは変更せず、サーバー、OS、ミドルウェアなどを新しいシステム基盤に移行する方法です。ソフトウェアやデータはそのままに、ハードウェアのみ取り替えるイメージです。オンプレミスからクラウドへと移行するケースもあります。ハードウェアとOS・ミドルウェアに絞った移行となるためコストを抑えられ、業務継続性も高くなります。反面、基本的にレガシーシステムのネガティブな部分もそのまま引き継がれる傾向があります。

リライト

現行システムに使用されているアプリケーションソフトウェアのコードを新しい言語に書き換えて、既存のシステムをそのまま使用する方法です。ソースコードの書き換えには自動変換ソフトを使う方法もありますが、コードや設計を分析し解読する作業が発生することもあります。問題なくリライトするには高い技術力が求められるかもしれません。

リファクター

「リファクタリング」とも呼ばれ、アプリケーションソフトウェアのコードの見直し・調整を行う方法です。リライトと似ていますが、リファクターでは使用する言語や機能はそのままで、より効率性や保守性を考えてコードを見直すことが主目的になります。厳密にはリファクターのみでモダナイゼーションを実現することは難しく、モダナイゼーションのための準備といえるでしょう。

リドキュメント

リドキュメントは現行システムのドキュメントを再度整備することを表します。リファクターと同じく、モダナイゼーションのための準備として利用される方法です。レガシーシステムではドキュメントも古くいなっていることが多いため、システムの可視化や運用性・保守性の向上のために用いられます。

レガシーシステムを使い続けていればそれだけコスト増大などのリスクが増し、DX化も遠のきます。思い切ったモダナイゼーションの実施を検討してみてはいかがでしょうか。

※2022年1月3日に公開した記事を再編集しています

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