これまでご紹介してきたコラムで、たびたび登場する「わくわく」という言葉。
これは私たちにとって、非常に重要な言葉です。当社は日立グループ内の2社が合併して、新たな組織として生まれ変わって以来、「従業員幸福度」に独自の基準を設け、従業員が幸せに働ける企業をめざしてきました。2022年に再定義した経営ビジョンの中にも、「わくわく」という言葉が使われています。
実際に合併後、毎年計測する従業員幸福度は順調に上昇し、当初の46.9%から最新の2021年度のサーベイでは59.0%に達するという成果をあげることができました。
一方、「従業員エンゲージメント」という言葉が、社会的に注目を集めています。従業員を巻き込み、エンゲージメントを高められる企画や施策を試行錯誤している企業は多いのではないでしょうか。私たちが「従業員幸福度」という言葉で向き合っている課題も、本質的には「従業員エンゲージメント」と同じだと考えています。
まだまだ私たちも伸びしろだらけではありますが、これまで取り組んできた活動に付けた当社独自の名称が、従業員エンゲージメントを高めるために大きな後押しになったのではないかと考え、今回はそのネーミングについてご紹介します。同じゴールをめざす企業や組織のみなさまの何かのヒントになれば嬉しいです。
「わくわく」のルーツであり、スタートとなるのは、やはり先ほどご紹介した「従業員幸福度」。2015年、会社設立の年に従業員サーベイをおこない導き出した基準です。では、さっそく年度別に、さまざまなネーミングを活動内容や由来などと合わせてご紹介します。
毎年実施する従業員サーベイの幸福度に関する14の設問に対する肯定的回答の平均値を、従業員の幸福度とし、毎年調査しています。
読み方は「じんじそうむほんぶ」。いわゆる人事総務部門のことです。「従業員に夢を与える組織でありたい」という想いから、「総務」を「創夢」という表記にしています。
従業員一人ひとりが個人の強みを知り、会社全体の強みの認識へつなげるという目的の活動。実際に、自分の強みを書いたカードを従業員同士で交換しました。子どもたちがヒーローや人気キャラクターのカードを交換するような、そんなわくわくも込められています。
当社オリジナルキャラクターの名前。デザインもネーミングも社内公募です。社名にもあるクリエイトを平仮名にして「ん」をつけることで親近感があり、呼びやすくなりました。この後の活動では、たびたび、くりえいとんが登場。取り組みの強い味方となります。
よい変化を起こす行動をした人に、従業員同士が「いいね!」カードを渡す活動。前年度の自分のことを伝える「強みカード交換」の成功から一歩進み、他者へ視点を拡げた取り組みです。カード交換という楽しさを活かし、どんどん従業員を巻き込んでいきました。
「いいね!カード」が盛り上がり、さらに派生した活動。「いいね!」をもらった人がさらに相手にメールで「いいね!」を返す。年度末には、「いいね!」を最も多くもらった人と、最も多くあげた人の両方を社内表彰しました。ある種のゲームのような楽しい感覚も、多くの従業員の参加につながったのではないでしょうか。
2016年設立した労働組合の2017年度のスローガン。「をむすび」には「〜と〜をむすぶ(つなぐ)」という意味が込められています。組合員同士がつながり、よりよい未来につながる。そのための活動を促進する狙いです。一度聞いたら忘れない、というのも広く伝播するポイントかもしれません。
従業員のモチベーションアップと会社のプレゼンス向上の両方を目標に、自分の得意分野を活かして、どんどん目立っていこう!という活動。「目立とう」ではなく、よりカジュアルな印象を与える「目立っちゃうぞ」というニュアンスの違いは、活動へ参加する心理的な障壁を下げ、「ちょっとやってみようか」と思わせる効果も。
「Happy」「Nexus」「Soundness」の頭文字を並べた労働組合活動の名称。「Happy」は、組合員と組合員の家族の幸せ。「Nexus」は、組合員間のつながり強化。「Soundness」は、健全な経営体質の確保の意。組合員からの「組合って何やっているか分からない」という声を受けたことで、多くの従業員に知ってもらえるような、親しみのあるネーミングをめざしました。
社会貢献活動として2017年に開始。従業員の募金額と同額を、会社が外郭団体に寄付します。「ちょこっと」という言葉は気楽に参加できるという印象を与えています。
前年度の「目立っちゃうぞ作戦!」をパワーアップ。部署ごとの独自活動を促進し、積極的に社内からアイデアを募集。施策は、会社の技術力や商材力をテーマにしたものだけでなく、くりえいとんがゆるキャラグランプリ企業部門で8位獲得や、グループ内のスポーツフェスティバルでの優勝を狙う活動など、純粋に「わくわく」をめざしたものも並列で扱っている点も、従業員を自然に巻き込む一助になっています。
2018年の労働組合のスローガン。2017年の「をむすび活動」の盛り上がりを受け、さらに継続。はじめて「ワクワク」という表現が現れます。これまでも「わくわく」という言葉自体は現場では使われていましたが、公に使われたのは最初かもしれません。
3年計画の全社運動の名称。合併直後のテーマだった「一体感の醸成」は一定の成果をあげたと考え、本格的に「社員の幸福」をテーマに活動を開始しました。「私は月曜日が嫌いでした」という当時社長の竹田広光の告白からはじまる新聞全面広告(2020年1月)も掲載。「まずは、私たちが、幸せになろうじゃありませんか」と従業員に呼びかけました。
Happiness大作戦!!の中の1つ。「信頼は挨拶からの積み重ね、和して、認めて成長しよう」という意味が「しあわせ」には込められています。
しあわせ日記は、Happiness大作戦!!を推進する1つの活動。Teamsを使って、従業員一人ひとりが幸せになるために取った行動や提案、幸せを感じた出来事を投稿。しあわせ係は、CHO(Chief Happiness Officer)と協力してHappiness大作戦!!を推進する係です。
コロナ禍で一斉にテレワークに切り替わった後、課題となった心理的安全性の確保や従業員の孤独感を解消するために、自社内で活用する“仮想オフィスサービス”の開発がスタートしました。後に、従業員エンゲージメント向上の大きなきっかけとなったサービスです。そして、この言葉は開発段階で、社内モニターに対して説明会で呼びかけたものです。仮想オフィス自体が「みんながわくわく働けるには、どうすればよいか」という大きな問いから生まれました。
「”こだわり”のICTで、まだ見ぬ”これから”を確かな”かたち”に」から刷新された経営ビジョンです。とうとう、経営ビジョンに「わくわく」が登場。
2022年10月17日、当社のハイブリッドワークをこのように定義し、仮想オフィスサービスのニュースリリースで発表。経営ビジョンに採用された「わくわく」という言葉は、仮想オフィスサービス誕生を機に社外に向けたコミュニケーションでも頻繁に登場するようになります。「わくわく」という言葉をキーとして、より当社のめざす働き方が明確になったといえるかもしれません。
当社の活動ネーミングを一覧化すると、「わくわく」だけでなく、「しあわせ」「ハピネス」「もっと」「いいね」など、非常に平易でシンプルな表現が多く見られます。もしかすると、これらの言葉はビジネスの場にはそぐわないと感じられる方もいるかもしれません。
その反面、従業員エンゲージメントや従業員の幸福というテーマにおいては、誰でも直感的に理解できる言葉だからこそ、想定以上に会社という人格からのメッセージを伝える力があったとも言えるのではないでしょうか。
当社はメッセージを伝える、従業員と対話することも非常に重視しています。対話という視点で施策をまとめたコラムもありますので、ご興味のある方はこちらからどうぞ。
さらに従業員エンゲージメントを高めるためにおこなった人事創夢本部の8年間の軌跡もご紹介しています。ぜひ以下よりダウンロードしてください。
人事総務部門が歩んだ試行錯誤の8年間
資料ダウンロード編集後記
世の中のヒット商品は、商品名がユニークで覚えやすいものがたくさんあります。
もちろん商品自体が優れているからヒットしたと考えられますが、最初は名前がユニークで覚えやすいから、注目が集まり、記憶に残り、おかげで商品の良さが広まったというパターンもけっこうあるのではないでしょうか。
このような視点でみると、皆さんが感じている以上に、名前は重要といえるかもしれません。
たとえば、しあわせ係。誰かが任命されると、きっと部署内では「しあわせ係って知ってる?」「●●さんが、しあわせ係になったんだって」「何、それ? しあわせ係って何するの?」というような会話があちこちで交わされ・・・・・・活動内容が自然に広まっていく様子が浮かんできませんか。
覚えやすくて、ちょっとユニークな名称。それ自体が、従業員エンゲージメントを高める扉を開くきっかけになっているかもしれません。
当社の「わくわく」の歴史を振り返ると、そんなヒントが見えてきました。