人的資本経営の流れが主流になり、従業員エンゲージメント向上が、よりよい組織を築くための重要な課題となりました。このコラムに興味を持っていただいたみなさんも、従業員エンゲージメント向上のためにさまざまな取り組みを実施されていることでしょう。
従業員エンゲージメント向上のための取り組みの中で、重要なカギを握るのが「エンゲージメントサーベイ」です。今や、さまざまなエンゲージメントサーベイが市場にはあふれていますが、なかなか使いこなせていないという実感を持っている方も多いようです。エンゲージメントサーベイは実施したが、その結果をもってどのように対策をとればよいか。この点についての最適解が、まだまだつかめていないという状況ではないでしょうか。
本コラムでは、私たちが従業員エンゲージメント向上を目的とするサービスを開発し、自社内で活用しながら、さらにお客さまにも提供してきた経験や知見をもとに、あらためてエンゲージメントサーベイの基本知識や実施ポイント、エンゲージメントサーベイの最近の傾向や、どのように活用すべきかについて、独自の見解を紹介します。
従業員エンゲージメントを定量的に測定するのが、エンゲージメントサーベイです。
まず大前提となる「従業員エンゲージメント」について、あらためて私たちの定義をお伝えします。私たちは「従業員エンゲージメントが育まれた健全な状態」を、「会社がめざす姿を示し、従業員を信頼し、期待することで、従業員が自己実現のために“わくわく”しながら仕事ができる状態」と定義しています。
私たちの従業員エンゲージメントについての考え方は、以下のコラムでも詳しく紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。
従業員エンゲージメントとは?
向上させるための重要な基本知識やメリットを紹介。
さらに成果につながる施策の方法も解説
従業員エンゲージメントとは何か、企業がエンゲージメントを向上させるための方法やメリットについての解説記事。エンゲージメントを高めるための具体的な施策を紹介します。
従業員エンゲージメントを可視化するエンゲージメントサーベイですが、現在は、無記名式で実施するアンケート調査が主流のため、“組織全体”の従業員エンゲージメントが数値化されます。名前を書かなくてよいため、回答による人事評価への影響などを気にせず自由に答えられるというメリットがあります。組織全体の従業員エンゲージメントを測るという点が特徴です。
エンゲージメントサーベイが、最もよく混同されやすいのが、従業員満足度調査です。
会社や仕事に対しての情熱や愛着、責任感など、エモーショナルな部分を測定するエンゲージメントサーベイとは、調査の対象が異なります。従業員満足度調査が測るのは、「仕事内容や職場環境」「会社の制度」「給与」「休暇日数」「福利厚生」などに個人が満足しているかです。人事制度や給与体系などを見直した際に、どの程度、従業員が満足しているのかを調べるケースに適しているでしょう。分かりやすく例えるなら、エンゲージメントサーベイは「働きがい」を調査するもので、現状の「働きやすさ」を調べるのが従業員満足度調査ともいえるかもしれません。
エンゲージメントサーベイには、「パルスサーベイ」と「センサスサーベイ」の二種類があります。大きくは設問数や調査の頻度などが異なります。
パルスサーベイの「パルス」とは、「脈拍(pulse)」のこと。短い期間で、繰り返し行う調査です。すばやく状況を把握できるというメリットがあります。
パルスサーベイの場合、通常は週1回程度から月1回程度など、かなり高頻度に調査を行います。イエス・ノー形式が多く、設問も5〜10問程度と数分で回答できるものが一般的です。そのため、回答をする側も回答を分析する側も、負担が少ないのが特徴です。
簡単な回答でデータを収集できて課題や問題点の抽出・分析も容易なので、コスト面でも用いやすく、タイムリーに従業員の反響や現場の状況を知りたいときに効果的です。
センサスサーベイは、「センサス」という名前のとおり、大規模調査のことです。国勢調査などのように、同一時点で調査対象の全てを調べる統計調査なども、センサス調査の一つです。
パルスサーベイに比べて設問数も100問前後と多く、記述式の内容が含まれるケースもあり、回答には一定の時間がかかるのが一般的です。頻度は1年に1回、多くても半年に1回程度が通常。多角的な視点で、調査対象の全体像を浮き彫りにできるという特徴があります。
エンゲージメントサーベイを導入しようと、調べ始めると必ず出てくるのが、「eNPS(イーエヌピーエス)」と「Q12(R)(キュートゥエルブ)」ではないでしょうか。この二つは人気も高く、エンゲージメントを測る代表的な指標です。いずれも設問数は少ないのですが、鋭い質問で従業員の本音を引き出す設計になっています。
eNPSは、「Employee Net Promoter Score(エンプロイーネットプロモータースコア)」の略です。質問は、自分の職場もしくは会社を、家族や友人、知人などにどの程度「推奨したい」と思うかという内容が一つです。
回答は、0を含む10までの11段階で回答します。「全く推奨したくない」場合は0を、「絶対に推奨したい」という場合は10を回答します。スコアの測り方は、0〜6までの回答者を「批判者」とし、7〜8は「中立者」、9〜10は「推奨者」と分けた後、「推奨者」から「批判者」を引いた数値がeNPSとなります。
自分の“知っている”誰かに推奨できるかどうか、という視点に立つことで、回答する側が慎重に厳しく判断し、建前ではなく本音が出るという傾向があります。
「Q12(R)」は、アメリカのギャラップ社が開発したエンゲージメントサーベイです。従業員エンゲージメントの業界では、誰もが注目する価値ある調査です。2024年の時点でこれほど安定した評価を得られているのは、「Q12(R)」以外にないかもしれません。
ギャラップ社の公式サイトによると*1、「10万以上のチームに所属する330万人以上の従業員エンゲージメントについて研究してきた」とあります。加えて、「80年以上も従業員エンゲージメントを研究してきた」ともあるため、まさに先駆者といってもいいのではないでしょうか。その長年の従業員エンゲージメントに関する研究の中から生まれたのが、「Q12(R)」と呼ばれる、従業員エンゲージメントを測定するために必要不可欠な12の質問です。
質問内容は、仕事についての動機や貢献性、職場について、さらには自身の成長などに関連するものです。回答形式も、パルスサーベイのように簡単な5段階方式です。「完全に当てはまる」「やや当てはまる」「どちらともいえない」「やや当てはまらない」「完全に当てはまらない」から選ぶだけというものです。
アメリカと日本では文化的背景は異なりますが、実績に基づく12の質問は非常に示唆に富んでいます。私たちがエンゲージメントサーベイ、そして従業員エンゲージメントについて考えるとき、重要な視点になるのではないでしょうか。
*1:ギャラップ社公式サイト
エンゲージメントサーベイは、従業員エンゲージメント向上には欠かせない調査です。とはいえ、従業員エンゲージメント向上というと非常に大きな言葉で漠然としているので、少し細分化してみましょう。私たちは、エンゲージメントサーベイには、次の3つの具体的な目的があると考えています。
従業員エンゲージメント向上に取り組むとき、最も大事なのは、課題の可視化です。対象物は、「従業員エンゲージメント」という非常に大きな概念です。ほとんどの企業において、従業員エンゲージメントを向上させるためには、単一の課題ではなく、複数の絡み合っている課題を解決する必要があるでしょう。
そのためにも、どこに課題があるのか。どのような課題があるのか。その課題の大小はどうか。解決すべき優先順位は?なども可視化して把握することが求められます。その上で、何から取り組んでいくのか、見定めていくことになるでしょう。
そのために、エンゲージメントサーベイが活用できます。従業員エンゲージメント向上を航海に例えるなら、目的地(ゴール)に向かうために現在地がどこかを知る必要があります。現在地が分かってこそ、最短で目的地にたどり着くには、どのような進路をとるべきかが見えてきます。そういう意味では、取り組みの開始地点を明確化しているという捉え方もできます。
エンゲージメントサーベイには、従業員についての理解を深めるという目的もあります。対象となる従業員がどのようなことを考えているのかを、明らかにするのもエンゲージメントサーベイの目的です。
従業員エンゲージメントは、会社や仕事に対しての情熱や愛着、責任感など、個人のエモーショナルな部分が大きく影響します。ギャラップ社のQ12(R)の設問もそうですが、従業員のより内面的な部分の理解を促進するのがエンゲージメントサーベイです。
エンゲージメントサーベイの、従業員満足度調査と大きく異なる点は「改善」という目的があることかもしれません。課題を可視化し、従業員を理解した上で、「どのように改善していくか」に焦点が当てられています。
実施後のアクションがあってこそのエンゲージメントサーベイなので、サーベイを実施しただけでは、まだ途中段階。エンゲージメントサーベイの集計結果から、見いだされた優先順位の高い課題に対する打ち手や対策まで洗い出し、そして実践して、初めてエンゲージメントサーベイの一つのサイクルが完了します。
一つのサイクルが終わったら一定期間の後、再度エンゲージメントサーベイを実施して、打ち手や対策に効果があったかどうかを測定。さらに課題を見つけ、対策を練る。定期的に繰り返し実施するという継続的な活用で、エンゲージメントサーベイの効果が最大化されます。
続いては、エンゲージメントサーベイによる効果についても、掘り下げます。狙ったとおりの効果だけでなく、副次的な効果もあります。
従業員エンゲージメント向上のための打ち手や、対策の計画および実施に役立ちます。
というのも、やみくもに打ち手や対策をしても、実際に従業員エンゲージメント向上に効果が出ているのかどうかを知るのは難しく、判断しづらいといえるからです。例えば、エンゲージメントサーベイを実施せずに、従業員エンゲージメント向上に効果があるといわれている施策を実施するケースもあるかもしれません。インターネット上では、従業員エンゲージメント向上のさまざまな成功事例が紹介されているので、それらをヒントに対策を実践することは可能です。実際に汎用性の高い施策もあるので、従業員エンゲージメント向上という成果を出すこともできるでしょう。ただし、それらの成功事例とは、自社の組織規模、働く環境、風土などは必ず異なる部分があるはずで、同じような結果を出せるとは限りません。
そのため、エンゲージメントサーベイが重要になるのです。まずエンゲージメントサーベイを実施して現状を把握する。たいていの場合、複数の課題が見つかり、その中で優先順位を決めて、打ち手や対策を練る。そして、決定した施策を実践した後で、エンゲージメントサーベイを再度行う。このように実施前後の数値や項目などを比較検証することで、その施策が実際のところ、どの部分にどれだけ、どのように効果があったかなどを可視化できるのです。
エンゲージメントサーベイの調査結果を確認しながら、施策の内容を強化していくことで、少しずつでも着実に成果を出していくことが可能でしょう。
これは副次的効果といえるかもしれません。
エンゲージメントサーベイを実施するということは、会社が従業員エンゲージメント向上に向き合っているという証拠になります。従業員を大切にしているという会社の姿勢を示すことで、従業員一人ひとりのモチベーションを高める効果もあるでしょう。もちろん、それは会社への愛着や誇りにもなり得ます。
エンゲージメントサーベイを継続的な施策として取り入れ、従業員エンゲージメント向上に向き合い続けることは、今多くの企業が抱えている離職率の課題にも効果があると考えられます。
エンゲージメントサーベイを活用することで、離職率にかかわる課題を見つけ、対策を行うことで離職率を低下させるケースもあれば、前述のとおり、エンゲージメントサーベイを実施しているという事実自体が、従業員個人のモチベーションを向上させ、さらにエンゲージメントも高め、定着率の向上にもつながるでしょう。その先には生産性の向上や、業績へのよい効果も期待できます。
エンゲージメントサーベイで見えてくるのは、従業員エンゲージメントだけではありません。組織そのものの姿も可視化できるでしょう。
例えば、グループやチームなど対象範囲を変えて実施すれば、該当するグループやチームの特徴的な弱みや課題が見えてくる可能性があります。弱みが見つかった場合は、人員配置や人財育成の視点で、施策を打つ際の参考になるでしょう。つまり、組織改善やチームビルディングという側面からも役立つのがエンゲージメントサーベイなのです。
実際にエンゲージメントサーベイを実施する場合、実施前から実施後のフローの中で、私たちが重要だと考える3つのポイントをご紹介します。
エンゲージメントサーベイ自体のそもそもの目的は、すでに説明しました。ここでは、個別に実践するエンゲージメントサーベイについての目的です。
初めて実施する場合は、まずは「現状の従業員エンゲージメントの把握」という目的になるでしょう。それ以降は、常に前回の調査で見えてきた課題に応じて何らかの打ち手や対策を行った上でのエンゲージメントサーベイという位置づけになります。ですから何を解決して、何を実現するためのエンゲージメントサーベイなのか、どういった従業員の意見をすくい上げようとしているのかなど、明確にする必要があります。調査目的を設定することで、必要な質問項目なども明確になるでしょう。
実施後は分析の上、対策を講じることが重要です。分析結果に合わせた打ち手や対策を実践するところまでを含めて、エンゲージメントサーベイです。むしろ、その分析や対策の方が重要性は高いともいえます。
エンゲージメントサーベイの分析・対策について、自社内で知見のある人財がいない場合は、エンゲージメントサーベイを提供している会社やコンサルタントに調査だけでなく、分析とコンサルティングまで依頼する方法もあります。
エンゲージメントサーベイは、状況の変化をチェックする調査です。パルスサーベイほどの短期間でなくても、ある一定の期間をおいて継続的に繰り返すことで、より本来の機能を発揮します。つまりPDCAの仕組みこそが、エンゲージメントサーベイの効果を正しく活かすのです。
従業員エンゲージメントは、それ自体が一朝一夕で課題解決できるようなテーマではないので、長期的に変化を観察していく必要があります。一度の調査と対策で成果が見えなくても辞めてしまうのではなく、少なくとも半年から1年、長い目で取り組む姿勢が大切です。繰り返しになりますが、継続的な運用こそが有効なのです。
エンゲージメントサーベイにおける、適切な質問とは何でしょうか。調査目的によっても変わりますが、ここではよくある質問項目という視点で概要を紹介します。
エンゲージメントサーベイを提供する会社によって異なりますが、デフォルトの質問項目が用意されている場合と、ある程度の質問項目が用意されている上で、自由に質問項目を追加できる場合とがあります。その点は、サービスを導入する際に確認しておくとよいでしょう。
質問項目は、大きくは「会社・組織」「仕事・キャリア」「人間関係」などについて分けられます。「会社・組織」という視点では、会社に対しての意見、会社への誇り、経営陣とのコミュニケーションなどを問う質問。「仕事・キャリア」という視点では、キャリアの成長機会や教育機会は十分に与えられているか、仕事に目的意識や誇りはあるかなど、働きがいに関連する質問が多く見られます。また「人間関係」という視点では、上司や同僚とのコミュニケーションや人間関係はどうか、チームの中で自身の居場所はあるかなどを問うものもあります。そのほか、報酬や福利厚生などについての質問が含まれるケースもあります。質問項目を独自に考える場合は、先ほどご紹介したギャラップ社のQ12(R)も参考にしながら作成するのもよいでしょう。
せっかく実施しても「回答が思った以上に集まらない」「有益な回答が得られない」などの事態に陥らないように注意するポイントは、2点あります。いずれもいかに従業員の協力を得られるかという視点で必要不可欠ですので、ぜひ実施計画に組み入れてください。
重要なのが、事前の説明会です。文書で行う場合もあるかもしれませんが、より深く理解してもらうという点では、説明会の開催をおすすめします。説明会では「エンゲージメントサーベイの目的」「どのような手順でやるのか」「実施後はどのようにフィードバックするか」の3点は必ず伝えましょう。
目的を伝えるのは、趣旨に賛同してもらい、本音で回答してもらうためです。目的を知ることで積極的に回答しようという意欲につながります。
さらに「実施後の結果をフィードバックする」と伝えることは、確実に自分たちの意見や声を取り上げてもらえるという回答へのモチベーションにつながります。回答することで、より自分たちが働きやすく、働きがいのある組織に変化していくかもしれないと、エンゲージメントサーベイ実施後の未来をイメージさせることが、回答率も回答の質も上げる重要な要素です。
そしてサーベイ実施前の説明会で伝えたとおり、必ず結果をフィードバックすること。これは従業員と会社の信頼関係をも左右しかねない大切なポイントです。「フィードバックする」という約束を守ることで、従業員の会社への信頼は増し、その後のエンゲージメントサーベイについても、より協力的、積極的に参加してもらえるようになるでしょう。これ自体も、従業員エンゲージメント向上の打ち手の一つと捉えてもよいかもしれません。
エンゲージメントサーベイを実施する際は、以上のようなポイントに沿って、従業員に広く発信し、サーベイを推進することが大切です。
さて、ここまではエンゲージメントサーベイに関連する基礎知識をご紹介してきました。ここからはもう一歩踏み込んで、最近の傾向やどのような対策が求められているのかについて説明していきます。
「従業員エンゲージメントが低いが、効果的な打ち手が分からない」とお悩みの人事部門の担当者に、共通している困りごとがあります。それは「離職率が高い。でも解決策がない」「効果的な打ち手や手法が知りたい」「新入社員や若手社員が生き生きしていない」「若い世代のメンタルヘルスに課題がある」などです。
中には「若い人たちが辞めていくのはなぜか。理由を知りたい」という切実な声もあります。さらにオフィス移転時や、新たな経営理念・ビジョン・ミッションの策定時、経営トップ交代による新体制や新制度スタートのタイミングで、「従業員が実際のところ、どう思っているか、意見や想いを吸い上げたい」という声もあります。
これらの声から、最近の課題は「個人」レベルの課題になっていると分かります。社会的な人的資本経営の流れもあり、組織はより「個人」に着目していくという潮流も後押ししているでしょう。
一方、冒頭で述べたとおり、現状の一般的なエンゲージメントサーベイは、無記名式が主流です。個人の課題や想いを知ることはできませんから、調査結果を踏まえて打てる対策も「個」ではなく「マス」を対象とした対策にならざるを得ません。
そこで近年、増えてきているのが個別分析の可能な記名式のエンゲージメントサーベイです。個人を特定して分析できるため、個々の悩みや課題に寄り添い、対策を打つことが可能なのです。
記名式のエンゲージメントサーベイは、個人が特定できるため、無記名式のエンゲージメントサーベイではなかった、「本心を書くことによって何か人事評価に影響しないだろうか」という回答者のハードルは少し上がるかもしれません。
そのため、エンゲージメントサーベイ実施前の従業員向けの説明会では、そういった解釈がされる心配はない旨を丁寧に伝え、心理的安全性を確保する必要はあるでしょう。回答者側が安心して自己開示できるような状態をしっかり担保できれば、従来の無記名式のエンゲージメントサーベイでは得られなかった、次のような3つの効果が期待できます。
個人の分析ができるので、調査結果に基づいて従業員一人ひとりに合わせた対応や対策が可能です。
いくつかの企業が個別分析型のエンゲージメントサーベイを提供していますが、調査項目の内容や、分析レポートなどを提案してもらえるのか、実施後の施策立案や今後の目標づくりなどのアドバイス・コンサルティングをどの程度深く対応してもらえるかは、各社で異なります。
サービスやツールを採用する場合は、自社の課題に合わせて、知りたい分野の実績や知見・ノウハウがあるかなどを基準に選ぶとよいでしょう。
個別分析型のよいところは、1on1の効率・効果を上げられる点にあります。1on1を実施している企業は多いと思いますが、1on1で「何を聞けばいいか分からない」「関係性を築くのが難しい」といった悩みが多いのも事実です。
個別分析型のエンゲージメントサーベイを実施している企業では、管理職である直属の上司に対して、部分的に部下の調査結果を共有することで、1on1で非常によい影響が出始めているという声があります。例えば、「仕事に関する意欲も生産性も高く、熱意もある。でも、現状の環境に不満がある」というような従業員は、見た目には非常にやる気があり、能力もパフォーマンスも高いと見えているので、周囲は離職の心配などしないかもしれません。しかし、自分の所属部署や業務内容について何らかの不満を持ち続けている限り、今よりよい環境で働ける企業を見つけたら、転職してしまう可能性があります。一見ポジティブに働いているという印象を与える従業員の「現状への不満」を把握できていないと、優秀な人財が離職するリスクを防げません。不安やストレスなどの原因は、なかなか第三者からは正確には判断しにくいのです。
個別分析型のエンゲージメントサーベイであれば、調査項目次第ではありますが、個人のそうした細やかな心理状態や内面に秘めた感情を知れます。だからこそ、1on1の際にうまく活用できれば、問題が表面化してしまう前に対応できるのです。
従来型のエンゲージメントサーベイが、組織やチームという大きな範囲でのエンゲージメントを測り、組織全体に働きかけ、エンゲージメントを向上させると捉えましょう。そうすると、個別分析型のエンゲージメントサーベイは、現場の従業員一人ひとりの声を吸い上げながら、エンゲージメントを高める、ボトムアップ型といえるのではないでしょうか。
「一人ひとりのエンゲージメントから全体のエンゲージメントなんて時間がかかりすぎる」と感じるかもしれません。しかし、今は多様性を尊重する時代です。人手不足も恒常的な課題になりつつある中、一人ひとりへのアプローチは必要だと考えます。
エンゲージメントサーベイを外部に委託する際、チェックすべきポイントは「自社の課題に合致しているか」「信頼できる企業か」「分析・コンサルティングは依頼できるか」などがあげられます。
エンゲージメントサーベイと呼ばれる組織診断ツールは、リーダシップやマネジメント、ストレスチェックなど、どの分野に強いかは提供する企業によって異なります。用意されている設問項目が、自社の知りたい課題に適した内容になっているか、知りたいことを把握できるかは、委託企業を決定する前に商品一覧や導入事例などの資料をよく読んでおいた方がよいでしょう。
さらに個人情報を取り扱うという点と、継続的に使用するという前提で、信頼性のある企業のサービスかどうかも重要です。せっかくデータを蓄積して変化が見えてきたところに、サービスやシステムの利用が停止することがないようにチェックしておきましょう。
また、分析やコンサルティングが可能かどうかも選定材料の一つです。回答結果をどのように比較検討を行い、検証するかは、専門的なスキルが求められます。その後の戦略や行動すべき指標など、打ち手や対策まで提案してくれるかどうかが選定する際の重要なポイントです。
従業員エンゲージメントを向上させるために、今後、必要になってくるのは、組織全体の視点と従業員一人ひとりの視点の両方を持つことだと私たちは考えています。組織としての傾向を押さえつつ、一人ひとりの状況も把握できれば、かなり的確な対策を打てるのではないでしょうか。
私たち日立ソリューションズ・クリエイトでは、自社内の従業員エンゲージメントを高めるためにさまざまな活動に取り組む中で、2023年7月にはじめて“記名式サーベイ”を実施しました。当時、個人情報の観点からも、個人が特定できる方法で調査を行うことは大きなチャレンジでした。前述のとおり、個人の行動変容を誘発するという狙いが根底にありました。こうした私たちの詳しい取り組みは、以下のコラムでもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
従業員エンゲージメントと心理的安全性のために続けてきた、従業員との対話とは(後編)
従業員エンゲージメントの向上と心理的安全性の確保に取り組むうえで、当社が従業員との対話を重視しているのは、なぜか。さらに対話を重視した施策として、どのようなものをおこなってきたか。
日立ソリューションズ・クリエイトでは、従業員一人ひとりの生産性・配置配属フィット感の意識やエンゲージメントを測定し、1on1や施策立案に活用できる個別分析型のサーベイ「日立人財データ分析ソリューション」をお勧めしています。
「日立人財データ分析ソリューション」は、サーベイの定期的な実施やほかのデータと掛け合わせての分析が可能なため、よりよい成果を出すために、お役に立てると考えています。
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■日立人財データ分析ソリューション
従業員一人ひとりの生産性・配置配属フィット感の意識を可視化し、サーベイ結果の分析から施策の提案まで行うことにより、お客さまの従業員エンゲージメント向上の取り組みをサポートします。
日立人財データ分析ソリューション
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■従業員エンゲージメント育みサービス
みんなで育む“わくわく”する職場を実現
「従業員エンゲージメント育みサービス」
フラットで風通しの良い職場環境を作り、働きやすさと“わくわく”の楽しさを両立したエンゲージメントを育む場を提供します。
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従業員エンゲージメントとコミュニケーションの関係について、当社独自の定義を紹介しているホワイトペーパーがあります。ご興味のある方は、こちらからご覧ください。無料ダウンロード実施中です。
従業員エンゲージメントは段階的に向上する。
4つのステージと整えるべき6つの要素
従業員エンゲージメントに真摯に取り組んできた当社のたどり着いた解が、従業員エンゲージメントは“段階”を経て次第に高まっていくということ。向上の段階を4つに分け、最初のステージで必要となる6つの要素について具体的に解説します。ダウンロードをして資料をご確認ください。
従業員エンゲージメント向上に関するセミナーも随時開催しています。詳しくはお問い合わせください。
この記事を作成した人
日立ソリューションズ・クリエイト
DXビジネス推進部 カスタマーサクセスチーム
「従業員エンゲージメント育みサービス」のカスタマーサクセスチームです。サービス導入後の理想の姿を一緒に描き、お客さまにとっての成功をめざしてサポートします。