ワークスタイル
隠れ残業の実態とは? 原因と企業がとるべき対策
会社には黙って仕事を持ち帰り自宅などで業務を行うことや、業務の延長線上で生じた雑務や事務的作業をプライベートでこなすことを「隠れ残業」といいます。ここでは、隠れ残業の実態や問題点を踏まえつつ、企業がとるべき対策について説明します。
隠れ残業の実態
隠れ残業とは、職場に申告せずに行う残業のことを指します。具体的には、申告した残業時間よりも長く職場で働いていたり、自宅などで業務時間外に仕事をこなしたりといったケースがあります。残業時間は適切に管理する必要がありますが、企業側がルール作りを徹底しておらず、従業員の裁量ややる気に任せたままにしていることも少なくありません。
近年ではICT(情報通信技術)の進展やテレワークの普及により、職場以外の場所に仕事を持ち出すことが一般化しており、隠れ残業がしやすい環境だといえます。仕事用のメールやチャットをチェックしたり、業務に関する情報を調べたりすることなども本来、業務の一環としてみなされるため、業務時間外に行うと隠れ残業となります。
日本国内では、ビジネスパーソンの半数以上が持ち帰り残業や残業代の出ない隠れ残業をしたことがあるといわれています。
なぜ隠れ残業が問題なのか
隠れ残業そのものは、従業員ではなく企業側が追及されるべき問題です。2019年4月1日から施行されている「働き方改革関連法」では企業に対して明確に残業時間の上限を定めており、どのような事情があっても月100時間未満(休日出勤を含む)に残業を抑えなければならないとしています。しかしこの法律が施行されたことにより、時間内に収めるために隠れ残業を容認する企業も出てきてしまい、今後さらに残業への規制が厳しくなっていく可能性があります。
隠れ残業が常態化すると、仕事とプライベートの切り替えが難しくなるため心身の健康状態に悪影響を及ぼす可能性があります。いつも仕事に追われている感覚があり、そのストレスが原因となって睡眠時間や精神面に影響が出てくることもあるでしょう。隠れ残業が一因となって体調が崩れた結果、医師の診察を受け、休職を余儀なくされる事態も起こりえます。
隠れ残業を含む長時間労働は従業員のモチベーションの低下を引き起こすだけではなく、企業や本人の意志に反した離職にまでつながってしまうおそれもあるのです。
残業代が出ないため、適正に業務を管理・評価されていないとして、職場への不信感が募る可能性もあります。仕事そのものへの意欲が失われるとパフォーマンスが低下しやすくなり、パフォーマンスが下がったことで仕事が終わらず家に持ち帰らなければならなくなる、といった負の連鎖にもつながりかねません。
隠れ残業の原因
隠れ残業の根本的な原因として、会社が残業時間を無理に削減しようとしている状況があげられます。残業代を固定し、そこを超えないように強いているような場合や、決まった時間に退勤の打刻をさせるといったことが隠れ残業の原因として考えられます。
また、働き方改革や省エネの観点から「ノー残業デー」などを設定して、決まった時間にオフィスを消灯・施錠する企業もありますが、受け持っている業務量が適切でない場合は、これらの施策も隠れ残業を招いてしまいます。
勤怠管理上の残業時間はしっかりと管理していても、実際の残業時間は「従業員の裁量に任せる」として管理を怠り、隠れ残業を容認している企業もみられます。従業員は納期やプレゼンに間に合わない、業務に支障が出るといった事情により、隠れ残業せざるを得ない状況に陥っているケースもあります。
企業と自分に不利益が生じないように心掛けた結果が隠れ残業であり、その実態を放置している企業側に責任がある問題だといえるでしょう。
企業がとるべき隠れ残業への対策
隠れ残業を減らす対策としては、固定業務を見直して負荷を減らす、厳しすぎるノルマを課さないようにするなどが有効です。残業代を固定せず、隠れ残業も適宜チェックして、残業代をしっかりと支給する仕組みも従業員のモチベーション維持につながります。隠れ残業のチェックには、パソコンのほかにスマートフォンやタブレットなどの端末でもログインができる勤怠管理システムの導入がおすすめです。
隠れ残業は働き方改革関連法の「労働時間の上限規制」に抵触する可能性があるため、従業員の労働時間を正確に把握する仕組みづくりが求められています。厚生労働省が発表した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」でも始業・終業時刻の確認及び記録は必須とされているため、隠れ残業を容認せずにしっかりと対策を行っていく必要があります。
従業員にとって隠れ残業は必要に迫られて行うものがほとんどであり、隠れ残業せざるを得ない社内規定や業務量が問題となっています。従業員のモチベーションを維持し、業績を伸ばすためには、適切な勤怠管理が必要だといえます。
隠れ残業の実態を正しく把握するために、勤怠管理システムを導入するなどの対策を検討してみてはいかがでしょうか。
あわせて読みたい
関連記事はこちら
勤怠管理を効率化するためのポイント
勤怠管理は企業の運営において重要な役割を果たします。勤怠管理の効率化を図ることで業務負担を軽減し、生産性を向上させることが可能です。しかし、非効率な管理方法によ...
詳細はこちら
労務管理と勤怠管理の違いとは?システム導入についても解説
「労務管理」と「勤怠管理」は、企業運営において非常に重要な要素です。しかし、労務管理と勤怠管理の違いを明確に理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。効...
詳細はこちら
リモートワークはデメリットが多い? 必要な対策も解説
リモートワークを試したいと考えている、あるいはそのように考えて試験的に実施したことはあるものの、自社にとってデメリットが多いことがネックとなり、完全な導入には至...
詳細はこちら
テレワークの課題と解決策とは? 企業の成功事例も紹介
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、テレワークを導入する企業が増加しました。そして導入が進んだことで、さまざまな課題も生じています。どのような課題と解決法があ...
詳細はこちら
テレワーク導入におけるセキュリティ対策のポイント
企業がテレワークを導入する際には、セキュリティ対策が欠かせません。テレワークで問題となるセキュリティリスクとはどのようなもので、リスクを回避するには何をすれば良...
詳細はこちら
何を実現できたのか? RPA活用事例
オフィス業務における定型的な作業を自動化できるRPAに注目が集まっています。RPAで何ができるのか、RPAの概要と活用するメリット、活用事例についてご紹介してい...
詳細はこちら
RPA導入で成功するための注意点や進め方を詳しく解説
人間が行う事務作業を自動化し、サポートする夢のシステムとして紹介されることも多いRPA。しかし、その導入には慎重な準備と精細な検証作業が必要です。RPA導入を成...
詳細はこちら
休み方改革とは? 働き方改革にとどまらない政府の取り組み
2019年から施行された「働き方改革関連法」は多くの注目を集め、多くの方がご存じでしょう。そのようななか、近年同じように注目を集めている「休み方改革」については...
詳細はこちら
チームビルディングとは? 目的やメリット
仕事を進める上でチームの存在は欠かせません。一人では達成が難しい目標も、チーム一丸となって取り組むことで達成できるようになることもあり、チームとしての能力を上げ...
詳細はこちら
企業がテレワークを導入するメリット・デメリットを解説
在宅勤務など、オフィスに通勤しないスタイルの働き方が普及しつつあります。テレワークというこの新しい勤労形態は、企業と従業員に何をもたらすのでしょうか。企業がテレ...
詳細はこちら
仮想オフィス(バーチャルオフィス)の機能とは? メリット・デメリットも解説
コロナ禍で一気にテレワークが普及しましたが、テレワークにおけるデメリットも見えてくるようになりました。コミュニケーション不足や帰属意識の低下、社員の孤独感などの...
詳細はこちら
ハイブリッドワークのメリット・デメリットや導入のポイントを解説
コロナ禍でテレワークが普及し、新しい働き方として一般的なものとなりました。そんななか、注目を集めている働き方がハイブリッドワークです。ハイブリッドワークはテレワ...
詳細はこちら
テレワーク時の部下からの不満ランキング
テレワークを導入した場合、社員の多くが在宅勤務となります。在宅勤務になった場合、オフィスなどの職場での勤務と比べると、業務を行う上でどのような不満を持つことにな...
詳細はこちら
テレワーク導入に際し会社が導入・支給したものランキング
今では数多くの企業がテレワークを始めていますが、テレワークの導入に際して、企業はどのようなツール、サービスを取り入れているのでしょうか。今回は、会社が導入・支給...
詳細はこちら
【テレワーク導入事例】さまざまな企業の取り組みを紹介
ここ数年、テレワークを導入する企業が増えています。ほとんどの従業員がテレワーク制度を利用し、ワークライフバランスの充実を実現しているだけでなく、企業としての生産...
詳細はこちら
テレワーク導入企業における社員管理、勤怠管理の調査結果
テレワーク導入についてのアンケート結果から、課題や解決策を探る一連のシリーズも今回で3回目。今回は特に社員管理、勤怠管理に焦点を当てて、アンケートの結果を紹介し...
詳細はこちら
テレワーク導入における課題は何? 未導入企業の懸念と実際とは
テレワークが推進される時代にあっても、テレワークの導入に二の足を踏んでいるという企業もまだ多いものです。そこで、「テレワークの導入を妨げている要素」について、ア...
詳細はこちら
「テレワークは不可能だと思う」人が約6割〜理由別の解決方法を探る〜
テレワークという勤務形態が一般的になってきた現在ですが、テレワークを導入できずにいるという企業もまだまだ多いものです。それでは、未導入の企業にはどのような事情が...
詳細はこちら
リモートワークとは? テレワークとの違いや導入方法、メリット・デメリットを解説
リモートワーク、テレワークといった言葉を目にする機会が増えています。いま、企業がリモートワークを導入することにはどんな意味やメリットがあるのでしょうか。導入の手...
詳細はこちら
今こそ考えたい! 製造業のテレワーク【afterコロナ・withコロナ】
製造業とテレワークはあまり相性が良いとはいえず、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、事務系など一部の部門でテレワークを行ったという製造業者でも、その後、定着に至っ...
詳細はこちら
導入準備から賢い進行方法まで解説! Web会議のやり方
世の中に徐々に浸透しつつあるWeb会議ですが、これから導入を考えているという会社も多いはずです。Web会議とはどのようなもので、どのようなメリットがあるのか、導...
詳細はこちら
勤怠管理システムを導入するメリット・デメリット
従業員の正確な労働時間を把握するために欠かせない「勤怠管理システム」は、正社員以外に派遣社員やアルバイトなど、非正規雇用によって不規則に勤務する従業員の業務管理...
詳細はこちら
テレワークの監視は必要? 従業員のさぼりを防ぐ方法
働き方改革の推進や新型コロナウイルスの影響などで、テレワークを導入する企業が増加しています。しかし、テレワークを導入したものの従業員の作業進捗が確認しづらかった...
詳細はこちら
テレワークも進化する? 5G活用の働き方改革
5Gによってこれまで以上に高速かつ大容量通信が可能となることは自明でしょう。そしてその特性がうまく生かされると、働き方もまた変化するだろうといわれています。5G...
詳細はこちら
在宅勤務で集中できない人におすすめの対策
テレワーク・リモートワークの一種である在宅勤務が普及してくるにつれ、在宅勤務ならではの悩みを持つ人も増えてきたようです。なかでも多いのが、在宅勤務だとオフィスで...
詳細はこちら
就業規則はどうする? 企業が在宅勤務を導入する際の注意点
国が提唱する働き方改革の推進や、多様で柔軟な勤務形態を導入することで人材を確保していく必要性、さらに新型コロナウイルスの影響もあって、「在宅勤務」を導入する企業...
詳細はこちら
仕事が奪われる? AI失業は本当に起こるのか
AI(人工知能)がこのまま進歩を続け、企業への導入が進めば、やがて多くの仕事がAIに奪われる……こんな話を耳にしたことのある人は多いのではないでしょうか。AIが...
詳細はこちら
社内問い合わせ対応をチャットボットで!成功・失敗事例を紹介
社員からの社内問い合わせ対応に人的リソースを割かれているという問題に対し、AIチャットボットを導入する企業があります。AIチャットボットははたしてどのような方法...
詳細はこちら
企業のチャットボット活用における導入のポイント
チャットボットの導入によって業務効率化やユーザーとの接点増加を進める企業が増えています。そもそもチャットボットとはどのようなツールで、どのような種類があるのでし...
詳細はこちら
知っておきたい! 障がい者を支援するテクノロジー
情報化社会において、現状、障がい者が情報を入手し使いこなすための手段はまだまだ制限が多いといえます。しかしそれに対し、障がい者を支援するテクノロジーが登場してき...
詳細はこちら
サテライトオフィスとは? 企業の課題とメリット・デメリット
多様な働き方が可能となる社会の実現に向けて国や企業が動き始めている今、注目されているのが「サテライトオフィス」です。なぜサテライトオフィスが必要とされ、企業はど...
詳細はこちら
働き方改革の目的とは? 取り組む企業の課題と解決策
2019年4月から「働き方改革関連法」が順次施行されています。これに伴い、企業はそれぞれの労働の現場で、具体的に「働き方改革」を推進していくこととなりました。し...
詳細はこちら
企業の人手不足解消のカギ! 多様化する雇用制度と勤務形態
人手不足に悩む企業にとって、今、必要なのは働く環境の改善ではないでしょうか。多様な雇用制度や勤務形態を採用することが、戦力となる人材を確保、維持するための有効な...
詳細はこちら
テレワークを支えるICTとは?
時間や場所に縛られることなく、効率的に働くことができるテレワーク。この新しいワークスタイルを支えているのがICTです。ここでは、国や関係団体も支援し推進している...
詳細はこちら
テレワークの種類とそれぞれのメリット・デメリット
時間や場所にとらわれない働き方として普及が進んでいる遠隔勤務形態、テレワーク。国が推進するプロジェクト「働き方改革」の一環として各企業で実施されていますが、総務...
詳細はこちら
テレワークに向いている業務と向いていない業務とは?
時間や場所の制約を受けずに柔軟に働ける勤労形態、つまり遠隔勤務を意味するテレワークは、社員(従業員)にとって働きやすいだけでなく、経営者側にとっても人材の確保、...
詳細はこちら